更新日:2024/8/30
母乳はいつまであげればいい?栄養と免疫に注目して解説
「母乳っていつまであげればいいの?」
「授乳をやめたらミルクが必要?」
「母乳には免疫が含まれるからなるべくあげたほうがいいのかな…」
いつかは卒乳するとわかっていても、母乳をやめる時期は多くのママが悩む問題です。
結論から言うと、母乳をいつまであげればいいか明確な決まりはありません。
ママにも赤ちゃんにも、無理のない方法で育児ができるのが1番です。
とはいえ母乳をいつまであげるかを決めるときに、なにか判断材料が欲しいですよね。
そこで今回は母乳の栄養・免疫といった医学的な側面や、多くのママが卒乳や断乳を考えるタイミングを解説します。
母乳をいつまであげればいいのか悩んでいるママはぜひ参考にしてください。
この記事に登場する専門家
藤川 あかり
大学卒業後、総合病院などで看護師として勤務。
出産と夫の転勤を機に退職、看護師の知識と子育て経験を活かしてWebライターとして活動中。
〈資格〉
- 保健師
- 看護師
母乳をいつまであげるかはママと赤ちゃんしだい
母乳をいつまであげるのかについては明確な決まりはありません。さまざまな理由で生後すぐからミルクで育つ子もいます。何日間は絶対に母乳をあげなければいけない、という決まりはないのです。
厚生労働省のガイドラインでも「乳汁を終了する時期を決めることは難しく、いつまで乳汁を継続することが適切かに関しては、母親等の考えを尊重して支援を進める。」とされています。
つまり母乳をやめる時期はママと赤ちゃんの状態やタイミングしだいと言えるでしょう。
WHOは2歳まで母乳を推奨
WHO(世界保健機関)は生後6ヶ月は完全母乳で育て、2歳までは母乳をあげることを推奨しています。母乳育児によって衰弱や肥満などの栄養不良を防いだり、赤ちゃんに免疫を渡すことができるとされているためです。
離乳の完了は1歳をすぎてからの赤ちゃんが多い
出典:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
日本では、生後5ヶ月ごろから徐々に母乳やミルクを減らし、1歳をすぎるころに離乳を完了するケースが多いようです。
厚生労働省の調査によると離乳を完了した時期は生後13〜15ヶ月が33%と最も多くなっています。
16ヶ月以降に離乳を完了した赤ちゃんと合わせると6割以上の赤ちゃんは13ヶ月以降に離乳を完了しています。
また、離乳食を開始して徐々に母乳やミルクを減らし始めるのは生後5、6ヶ月ごろが全体の8割以上です。
前回の調査と比べると離乳の開始・完了とも時期が遅くなっていることがわかります。赤ちゃんの発達に寄り添って、じっくりと離乳を完了するのがスタンダードになりつつあると言えるでしょう。
母乳の栄養が必要なのは1歳ごろまで
発達や離乳食の進み具合によって個人差はありますが、赤ちゃんは1歳をすぎると大部分の栄養を食べ物から摂取できるようになります。
母乳や離乳食から赤ちゃんが栄養を摂取する割合は以下の通りです。
時期 | 栄養の特徴 |
---|---|
6ヶ月ごろまで | 栄養のほとんどを母乳やミルクから摂取。離乳食を開始しても最初はほとんど母乳の栄養 |
7〜8ヶ月 | 母乳やミルクの栄養は60〜70% |
9〜11ヶ月 | 母乳やミルクの栄養は50%以下 |
12〜18ヶ月 | 栄養の大部分を食事やおやつで摂取 |
母乳がよく出る人の特徴は?母乳の量を増やすためにできることを紹介
自分は母乳が出るのか、今後出るようになるのか気になる方もいるでしょう。母乳がよく出る人の特徴と、母乳の量を増やすためにできることを助産師が徹底的に解説します。
1日3回の離乳食が習慣になっており、コップやストローで水分をとれると断乳や卒乳を考えても良いサインです。
離乳食を開始したら赤ちゃんが成長曲線にそって大きくなっているかを見ながら、徐々に母乳を減らしていきましょう。
好き嫌いや食べムラがある赤ちゃんは少なくありませんし、母乳をやめたらごはんを食べられるようになる赤ちゃんもいます。
母乳には免疫を赤ちゃんに渡す作用もある
母乳には栄養だけでなく、IgA、IgMなどの免疫物質も含まれています。
免疫物質とは私たち人間の身体を病原体などからまもってくれる、ガードマンのようなものです。
免疫物質のなかでも母乳にはIgAが最も多く含まれ、次にIgMが多く含まれています。
IgAは初乳に多く含まれており、粘膜から細菌が侵入するのを防ぐ役割があります。IgMは病原体の侵入を発見すると初期に働く免疫です。
赤ちゃんはお腹の中にいるときも免疫物質を作っていますが、母乳からも免疫を受け取っているのです。
母乳に免疫が含まれるのはいつまで?
参考:雪印乳業株式会社「最近の日本人人乳組成に関する全国調査」
雪印の研究によると、母乳に含まれる免疫は産後5日ごろまでの初乳がもっとも多いですが、それ以降も0にはならないことがわかりました。
つまり、免疫の面で言えば初乳だけではなく、そのあとも母乳をあげることで赤ちゃんに免疫を渡せるのです。
ただ、母乳をあげているから必ずしも風邪をひかないということはありませんし、ミルクだから風邪をひきやすくなるというような単純なものではありません。
赤ちゃんの体調不良は環境や発達、体質による個人差が大きいので、母乳をあげていない・少ないせいだと決めるのはやめましょう。
卒乳・断乳を考えるタイミング
「卒乳」は赤ちゃんがごはんから栄養をとれるようになり自然と母乳を飲まなくなること、「断乳」は授乳をやめる時期を決めて母乳を終わりにすることを意味します。
母乳育児をしているママが卒乳や断乳を考えるのは以下のようなタイミングが多いようです。
- 赤ちゃんが保育園に入るとき
- 離乳食を3回食べられるようになったとき
- 妊活や妊娠のとき
- ママがつらいとき⇒下の記事も参考にしてみてください!
それぞれ詳しく説明します。
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赤ちゃんが保育園に入るとき
赤ちゃんが保育園に入るとママと離れる時間が長くなるため、完全母乳のまま育てることは物理的に難しくなります。
仕事を再開することをきっかけに断乳を考えるママも少なくありません。
ただ、入園と同時に断乳をするのは環境の変化が大きく、赤ちゃんにストレスがかかります。
できるだけ入園前に断乳を進めていけるといいでしょう。
もちろん入園するからといって完全に母乳をやめる必要はなく、朝や夜間だけ授乳を続けているママもいます。また、完全母乳を続けたい場合は冷凍の搾母乳を使用できるかなど園とも相談しましょう。
離乳食を3回食べるようになってきたころ
形のある食べ物を噛んで食べられるようになり、離乳食を3回食べるようになると栄養面では母乳の必要性は低くなり、卒乳の時期と言えます。
離乳食をあまり食べない子も、母乳をやめれば食べるようになることがあります。赤ちゃんの成長曲線や離乳食の進みぐあいを見ながら徐々に母乳を減らしていきましょう。
妊活を考えたり、妊娠したとき
次の赤ちゃんに向けて妊活をしたいときや、妊娠したときは授乳を続けるか医師とも相談して判断しましょう。
まず妊活ですが、ホルモンの影響で授乳中は生理の再開が遅くなるママが多く、断乳を考えるケースが考えられます。
もちろん個人差があり、授乳をやめれば生理がすぐ再開するわけではありませんし授乳中でも生理がくることもあります。
妊活のために断乳をするか、家族や医師と相談しましょう。
なお、生理が始まる前に排卵することもあるため適切な避妊は必要です。
次に授乳中に妊娠したときですが、必ずしも断乳する必要はありません。ママの体調をみながら母乳をあげましょう。
ただし授乳は子宮収縮を促すこともあり、とくに切迫流産や切迫早産の場合は医師とも相談しましょう。
つわりなどで自分の栄養がとれていないのに母乳をあげるのはママの体調不良にもつながりますので、無理をしないことが大切です。
ママが母乳を続けるのは辛いと感じたとき
ママが母乳を続けるのは辛いと感じたときも、断乳の時期です。そんな自分勝手な理由で母乳をやめてもいいの?
と思うかもしれませんが、ママがストレスなく過ごすことが1番大切です。
母乳育児は薬やアルコールなどの制限や睡眠不足など、ママの身体に負担が大きいのが現実です。
ミルクはとてもよく研究して作られていますし、生後すぐからミルクで育つ赤ちゃんもいます。
母乳を無理して続けるのが辛いときは思い切って断乳して、ママがリラックスできるようにしてくださいね。
母乳をやめたらミルクは必要?
さまざまな理由で母乳をやめた場合、ミルクをあげるかどうかは赤ちゃんの月齢や離乳食の進み具合によります。
1歳ごろまでは、まだ食べ物だけで栄養をとることは難しいため、離乳食に加えてミルクも与えましょう。
混合栄養の場合、ミルクは続けるべき?
母乳とミルクの混合栄養の場合も、成長曲線にそって体重が増加し、離乳食が3回食べられているようならミルクも徐々に減らしてやめていっても問題ないでしょう。
また、9ヶ月から飲めるフォローアップミルクは必ず飲まなければいけないわけではありません。
フォローアップミルクは鉄やカルシウムといった栄養の補助が役割なので、バランスの良い離乳食をあげられていれば飲まなくても大丈夫です。
断乳する場合、注意すること
断乳する場合は以下の3つに注意が必要です。
- ママのおっぱいケア
- 赤ちゃんの水分や栄養不足
- 赤ちゃんの心のケア
それぞれの注意点を説明します。
ママのおっぱいケア
断乳をすると、母乳が飲まれなくなるためおっぱいがカチカチに張って痛かったり熱をもったりすることがあります。
おっぱいを冷やすケアや、適度に母乳を絞って圧を抜くことが必要です。全て絞るとまた母乳が作られてしまうため、絞るのは圧を抜く程度で最低限にしましょう。
助産師に相談すれば、断乳時におっぱいケアを受けることも可能です。
赤ちゃんの水分・栄養不足
赤ちゃんの水分や栄養不足にも注意が必要です。
コップやストロー飲みで、これまで授乳していたタイミングで水や麦茶を与えましょう。
また、母乳をあげているときと比べてうんちやおしっこの回数や量が大きく減っていないか、体重は成長曲線にそって増えているかを注意してみていきましょう。
赤ちゃんのご飯は、不足しがちなカルシウムや鉄分、タンパク質などの栄養を意識できるといいですね。
以下の記事ではママさん達にとって重要な栄養素であるマグネシウムについて解説しています!
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赤ちゃんの心のケア
母乳をやめるときは赤ちゃんへのスキンシップや愛情表現を意識しましょう。
赤ちゃんにとって授乳はママから安心感を得る時間です。
断乳するときは普段よりもスキンシップを多めにしたり、おっぱいをやめることやおっぱいをやめてもママは大好きだよということを言葉で伝えたりして赤ちゃんの心のケアも行いましょう。
また、可能であればいきなり断乳するのではなく徐々に授乳回数を減らして断乳をするとママにも赤ちゃんにも負担が少なくなります。
母乳をいつまであげるかは決まっていない。ママが後悔しないのがベスト!
母乳をいつまであげれば良いかはきまっておらず、ママが後悔しないタイミングで卒乳や断乳をしていくのがベストです。
赤ちゃんがほしがっていてママも授乳を続けたいのなら無理にやめる必要はありませんし、ママがつらいならば頑張って授乳を続ける必要もありません。
栄養的には母乳やミルクは1歳をすぎて離乳食が3回食べられるようになるころまで必要で、免疫は初乳のあともずっと含まれ続けます。
母乳をやめた場合も、1歳になっていなかったり離乳食が3回になっていなかったりする場合はミルクをあげましょう。
母乳でもミルクでも、ママにとって無理のない方法で赤ちゃんを育てていくことが1番大切です。リラックスしながら今しかない赤ちゃんの育児を楽しんでくださいね。
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授乳中に食べてはいけないものってあるの?〜母乳に影響する産後の食事の注意点〜【助産師執筆】
お母さんの体で作った母乳を赤ちゃんにあげる授乳期。この時期は、特にお母さんの健康が赤ちゃんの健康にダイレクトに関係します。その授乳中に食べてはいけないものはあるのかとその理由、さらに積極的に摂取していきたい栄養素について紹介していきます。
参考:日本WHO協会「母乳育児を守ろう」
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
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