更新日:2025/1/8

母乳に含まれる栄養を助産師が完全解説!母乳育児のメリットや不足しがちな栄養素もチェック

母乳育児のメリットや不足しがちな栄養素もチェック
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ママのカラダの中でつくられる母乳には、どのような栄養が含まれているのでしょうか?

現在母乳で赤ちゃんを育てているママも、今後母乳で育てたいと思っているママも、「赤ちゃんの栄養は自分の母乳だけで十分に摂れているの?」と気になる方も多いと思います。

今回の記事では、母乳に含まれる栄養について、母乳育児のメリットや不足しがちな栄養素も含めて助産師が徹底解説していきます。

この記事に登場する専門家

助産師 四辻有希子

大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。

〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター

赤ちゃんにとって最良の栄養「母乳」で育てるメリット

母乳に含まれる具体的な栄養素を見ていく前に、まずは母乳育児のメリットを確認しておきましょう。

◆母乳育児のメリット

  • 赤ちゃんに必要な栄養をしっかり与えることができる
  • ママの産後の子宮復古(妊娠前の子宮の状態に戻ろうとする力)が早くなる
  • ママが妊娠前の体重に戻りやすい
  • 赤ちゃんとのスキンシップが増え、お互いに安心できる
  • ミルク代がかからず、経済的な負担をおさえることができる

そして、なんといっても1番のメリットは、母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養であること。母乳は赤ちゃんにとって、オーダーメイドの栄養食なのです。

これら以外にも母乳育児にはメリットがたくさん。ここから詳しくチェックしていきましょう。

赤ちゃんの成長に応じて必要な成分が詰まっている

母乳は赤ちゃんの成長に応じて、初乳、移行乳、成乳と少しずつ成分が変化していきます。これにより、その時期の赤ちゃんに最良の栄養を与えることができるのです。

初乳

赤ちゃんが生まれたあとすぐにでる母乳は「初乳」といいます。

生後まもない赤ちゃんは消化機能が未熟なため、少しでも消化しやすいようにカロリー・糖質・脂質は少なくなっています。

一方で、赤ちゃんが外の環境から身を守れるように、ミネラル・免疫物質を含むタンパク質を多く含み、赤ちゃんの免疫力を高めてくれます。

移行乳

産後3日目から3週間ごろまで分泌される母乳は「移行乳」といいます。

少しずつ消化機能が発達し、赤ちゃんに必要なすべての栄養を母乳から吸収することができるよう、初乳に比べると、カロリー・糖質・脂質が増えてきます。

成乳

産後1ヶ月ころから授乳をやめるまで分泌される母乳を「成乳」といいます。

カラダを急速に発育させていく赤ちゃんの栄養源となるため、カロリー・糖質・脂質を多く含みます。

初乳ほどではないですが、免疫物質を含むタンパク質も含んでいます。

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母乳の栄養は徐々になくなっていくって本当?

結論からいうと、母乳が出ている限り、母乳の栄養がなくなることはありません

母乳の栄養は赤ちゃんの成長に合わせて変化していくため、初乳と成乳を比べると免疫物質は少なくなっていきますが、赤ちゃんにとって必要な栄養を十分に含んでいます。

ただ、赤ちゃんの栄養の摂り方は成長に合わせて変わってきます。

生後5ヶ月を過ぎ、赤ちゃんの体の準備が整うと離乳食が始まります。離乳食が進んでいくと、母乳を中心とした栄養摂取から食事を中心とした栄養摂取へと変わっていきます

赤ちゃんが母乳から栄養を摂取する割合は、徐々に減っていきます。

生後4ヶ月:100%
生後6ヶ月ころ:70〜80%
生後8ヶ月ころ:60〜70%
生後11ヶ月ころ:30〜40%

母乳の栄養がなくなることはありませんが、赤ちゃんが大きくなるにつれて栄養の摂取方法が変わってくるということですね。

免疫物質がたっぷりつまっている

生まれて間もない抵抗力の弱い赤ちゃんが病気になりにくいのは、ママの免疫物質(ウイルスや細菌などの異物からカラダを守る力を持つ物質)が移行しているからです。

この免疫物質は、お腹の中にいるときにもママから赤ちゃんへと移行しますが、生まれたあとは、母乳に含まれる免疫グロブリンをもらうことで外敵から身を守っています

栄養バランス・腸内細菌叢のバランスがいい

母乳は時期に応じて成分が変化することからわかるように、赤ちゃんにとって栄養バランスがとてもいいものです。

赤ちゃんの消化機能は時間をかけて整っていきます。赤ちゃんに必要な栄養がつまった母乳は消化もしやすく、効率的に栄養を吸収することができます

また、母乳にはビフィズス菌などの腸内細菌も含まれており、これが赤ちゃんの腸内細菌として定着することで赤ちゃんの腸内環境を整えたり、免疫力を高めたりしてくれます。

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母乳に含まれる栄養素

では、母乳には具体的にどのような栄養素が含まれているのでしょうか?

母乳は約88%が水分でできています。

その他、炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質・ミネラル・ビタミンなどさまざまな栄養素が含まれています。

成分
たんぱく質 (g/100kcal)1.7
脂質 (g/100kcal)5.4
炭水化物 (g/100kcal)11.1
▼脂溶性ビタミン
ビタミン A (µg/100kcal)69
ビタミン D (µg/100kcal)0.5
ビタミン E (mg/100kcal)0.6
ビタミン K (µg/100kcal)1.5
▼水溶性ビタミン
ビタミン B1 (mg/100kcal)0.02
ビタミン B2 (mg/100kcal)0.05
ナイアシン (mg/100kcal)0.3
ビタミン B6 (µg/100kcal)Tr(微量)
ビタミン B12 (µg/100kcal)Tr(微量)
葉酸 (µg/100kcal)Tr(微量)
パントテン酸 (mg/100kcal)0.8
ビオチン (µg/100kcal)0.8
ビタミン C (mg/100kcal)8
▼多量ミネラル
ナトリウム (mg/100kcal)23
カリウム (mg/100kcal)74
カルシウム (mg/100kcal)42
マグネシウム (mg/100kcal)5
リン (mg/100kcal)22
▼微量ミネラル
鉄 (mg/100kcal)0.06
亜鉛 (mg/100kcal)0.5
銅 (µg/100kcal)50
マンガン (mg/100kcal)Tr(微量)
ヨウ素 (µg/100kcal)-
セレン (µg/100kcal)3.1
クロム (µg/100kcal)0
モリブデン (µg/100kcal)0

母乳の主な成分と赤ちゃんのカラダのなかでの働きについて、詳しく見ていきましょう。

炭水化物(糖質)

  • 乳糖:エネルギー源となる糖質でカルシウム・マグネシウムなどの吸収を促す
  • オリゴ糖:ビフィズス菌の成長を促すことで細菌感染やウイルス感染を予防する
  • 多糖類:細菌感染やウイルス感染を予防する

タンパク質

  • グロブリン:特に腸内などのカラダの粘膜の表面を覆うことで、病原体からカラダを守る
  • ラクトフェリン:鉄分を運ぶ
  • αラクトアルブミン:菌に対抗する力がある
  • リゾチーム:炎症をおさえる
  • リパーゼ:脂肪の消化・吸収をサポートする
  • タウリン:脳の神経を伝達する

脂質

  • 長鎖多価不飽和脂肪酸:脳の発達に不可欠、ホルモンの材料になる
  • 遊離脂肪酸:感染を予防する
  • トリグリセリド:効率のよいエネルギー源、ママの食事によって構成される脂肪が違う

ミネラル

  • カルシウム:骨をつくるもととなる
  • マグネシウム:筋肉の収縮や神経の伝達をサポートする
  • 鉄:酸素や栄養を運ぶヘモグロビンをつくるもととなる

ビタミン

  • ビタミンA:皮膚や粘膜を健康に保つ
  • ビタミンD:カルシウムの吸収をサポートする
  • ビタミンE:細胞や脂質が酸化するのを防ぐ
  • ビタミンK:血液を凝固する成分をつくる
  • ビタミンB:血液や細胞のもととなる
  • ビタミンC:コラーゲンをつくる、免疫力を高める

知っておきたい母乳育児で不足しがちな栄養素

赤ちゃんに必要な栄養がたっぷりつまっている母乳ですが、実は不足しがちな栄養素もあります。足りない栄養素を補う方法とともに、詳しく紹介します。

ビタミンK

ビタミンKは、赤ちゃんのカラダの中で血液を固める成分をつくる働きを持つ重要な栄養素です。

しかし、ビタミンKは胎盤を通過しにくい成分であるため、お腹の中でママからもらいにくい栄養素。そのため、生まれたときは赤ちゃんのカラダの中でビタミンKが不足した状態となっています。

母乳にもビタミンKは含まれるものの、赤ちゃんのカラダの中では不足しがちな栄養素の一つです。

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの吸収をサポートする働きがあり、骨をつくるために欠かせない栄養素です。

母乳で育った赤ちゃんはビタミンDが不足しやすいといわれています。(※1)

ビタミンDは日光を浴びることでカラダの中でつくることもできますが、感染症の流行の影響で赤ちゃんの外出が減り、不足しがちです。

また、母乳にもビタミンDは含まれますが、ママたちが日焼け止めや紫外線防止用の化粧品を使用することで皮膚に紫外線が当たりにくくなり、生成が減少してしまうことも。そのため母乳に含まれるビタミンDも不足しがちになります。

鉄分

鉄分は、赤ちゃんの血液をつくるサポートをします。特に、血液の成分であるヘモグロビンは、赤ちゃんのカラダに必要な栄養と酸素を全身に送る働きがあり、赤ちゃんの健康と成長には不可欠。

しかし、ママたちは出産時に出血するため、産後のカラダの中の鉄分は不足しがちです。

また、早い人では授乳中でも産後2〜3ヶ月で生理が再開することもあり、女性のカラダは鉄分不足になることが多いです。

鉄分はママ自身のカラダを維持することが優先になり、母乳に含まれにくくなるため不足しやすいといえます

母乳のために摂ったほうが良い栄養素や、おすすめの食事はこちらの記事も参考にしてくださいね!

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母乳が作られるしくみ

最後に、そもそも母乳はどのようにつくられるのか解説します。

母乳は血液からできている

母乳はおっぱいの乳腺の周りにある毛細血管に血液が流れることで、この血液を材料にしてつくられます

このことから、「血液が材料なのに、なんで母乳は白いの?」と疑問に感じる方も多いと思います。

母乳が白い理由は、血液が乳腺に取り込まれるときに、血液の中にある赤い成分である赤血球が取り除かれるためです。

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母乳が出るしくみ

妊娠中は、プロラクチンというホルモンが分泌されることで、おっぱいの中にある母乳をつくる組織である乳腺を発達させます。

出産後に向けて乳腺は発達していきますが、まだ母乳を出す必要はないため、妊娠を維持するホルモンであるプロゲステロンによって母乳の分泌をおさえています。

出産後は、胎盤が外に出ることでプロゲステロンの分泌が急激に低下するため、母乳をおさえる作用がなくなります。

そして、生まれた赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激で、脳下垂体からプロラクチンとオキシトシンが分泌されるようになります。

プロラクチンは、妊娠中には乳腺を発達させていましたが、出産後には母乳をつくる働きをします。また、オキシトシンは乳腺でつくられた母乳を外に押し出す働きをします。

赤ちゃんがおっぱいを吸うことでプロラクチンとオキシトシンが分泌され続け、母乳の分泌が増えていくのです。

母乳は出産後からつくられるというイメージがありますが、実はおっぱいの中では妊娠中から出産後の赤ちゃんのために母乳をつくる準備をしています

母乳育児をスムーズに進めていくためには、妊娠中からのケアも大切です

まとめ

母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養ですが、赤ちゃんが不足しがちな栄養素もあります。それは、ビタミンK、ビタミンD、鉄分。

特に、ビタミンDと鉄分はママのカラダの中で不足しがちな栄養素です。ママがしっかりと栄養を補給することで、母乳を通して赤ちゃんに栄養を送っていきたいですね。

mamacoは、母乳の栄養を考えるママのために作られた産後専用のサプリメント

母乳に不足しがちな栄養をmamacoでチャージして、栄養たっぷりの母乳を赤ちゃんに届けていきましょう。

参考文献:

(※1)鶴田恵子他:母乳栄養児のビタミンD欠乏と日光浴,第32回日本外来小児科学会年次集会

和田友香:新生児栄養のトピックス【3】早産時に有利な母乳の成分,日本新生児成育医学会雑誌,第36巻第2号,2024

厚生労働省:別表1 母乳および乳児用調製粉乳に含まれる成分組成と表示の許可基準

日本小児科学会:新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言

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