更新日:2024/11/13
妊活におけるビタミンDの効果とは|必要な摂取量と効率的に摂る方法を解説
「ビタミンDで妊娠しやすくなるってホント?」
「ビタミンDをどれくらい摂れば効果が得られるの?」
赤ちゃんが欲しい人にとって、赤ちゃんを授かる体質をつくること、授かった命を守り育てることは、何よりも大切なことですよね。
ビタミンDは着床率を高め、流産率を下げることで「妊娠力と妊娠の継続」を高めるビタミンとして科学的に証明されています。
一方で、30~39歳女性のビタミンD摂取量は5.2μgと、目安量の8.5μgにまったく足りていません。妊娠を望んでいる女性は、積極的にビタミンDを摂る必要があります。
この記事では、ビタミンDの摂取によって妊娠率が上がるメカニズムを科学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
★この記事をおすすめする人
・ビタミンDを摂取することで、着床率や流産率がどれくらいか変わるのか知りたい
・ビタミンDを摂取する時期と必要摂取量を知りたい
・ビタミンD を含む食品や、おすすめのサプリメントを知って対策したい
ビタミンDを効率よく摂取して、元気な赤ちゃんを迎えましょう。
ビタミンDの摂取におすすめの妊活サプリを先に見たい方は、こちらからどうぞ。
この記事に登場する専門家
ライター 水沢 ちえ
医薬品業界歴10年。工学修士。離職後は大学の研究サポートなど、薬品の製造・品質・分析のプロとして基礎研究を支えた。現在はライターとして活動。自身の妊活体験を交えながら、正しい情報をわかりやすく伝えている。
ビタミンDは着床率・流産率に関係があった!
ビタミンDに関するさまざまな論文をもとに、ビタミンDが「十分にある人」と「不十分または不足している人」の対比表をまとめました。
十分にある人 | 不足・欠乏している人 | |
---|---|---|
着床率 | 高い | 低い |
流産率 | 低い | 高い |
出生率 | 高い | 低い |
不妊症のリスク | 低い | 高い |
ここからはビタミンDが妊娠率にどのように影響を与えているのか、時期別に詳しく解説しますね。
【妊活期】着床障害を防ぐ
体内にビタミンDが十分にあると、妊娠にいたるまでの期間が短いという報告があります。
血液中のビタミンD濃度と妊娠率を比較したアメリカの調査では、血中ビタミンD濃度が10ng/ml増加するごとに、妊娠率が10%増加すると報告されています。
血液中のビタミンDの濃度と妊娠するまでに6か月以上かかる確率についての報告は次のとおりです。
血液中のビタミンD濃度( ng/ml ) | 妊娠までに6か月以上かかる確率( % ) |
---|---|
20ng/ml未満 | 51% |
30-40ng/ml | 28% |
50ng/ml以上 | 15% |
ビタミンD不足である20ng/ml未満の人は、半年で半分の人しか妊娠にいたっていません。一方で、ビタミンDが十分に摂取できている50ng/ml以上の人は、半年を待たずに妊娠にいたっていることがわかります。
実は、日本人の平均的な血中ビタミンD濃度は11.4 ng/mLと報告されていて、多くの日本人がビタミンD不足です。ビタミンDは、不妊治療の際にも確認される重要な項目なんですよ。
参考文献:
[Pre-conception 25-hydroxyvitamin D (25(OH)D) and fecundability]
[Estimation of the vitamin D (VD) status of pregnant Japanese women based on food intake and VD synthesis by solar UV-B radiation using a questionnaire and UV-B observations]
妊娠率が上がる仕組み
なぜビタミンDを摂取すると妊娠率が上がるのでしょうか?
check ✔︎
ビタミンDは骨をつくるはたらきの他に、免疫系に作用して受精卵の着床率を高めるはたらきをしています。
受精卵はママの体にとっては異物です。正常に免疫機能が働いてしまうと、受精卵は異物として排除され、子宮内膜に着床できません。
そこで、受精卵が着床する部分には、ママの免疫を抑える物質がつくられます。この免疫を抑える物質を作り出すのに、ビタミンDが関係していると考えられています。
免疫と妊娠に関する研究において、不妊症患者が3か月間毎日1000IUのビタミンDを摂取したところ、血液中のビタミンD濃度が30ng/mL以上まで上昇しました。
すると、体内の免疫をつかさどる物質のバランス(Th1/Th2細胞比)が改善されて、妊娠にいたるケースが報告されたのです。
ビタミンDは受精卵がママの体から異物として排除されるのを防ぎます。ビタミンDにより大切な赤ちゃんを受け入れる体がつくられ、妊娠力がサポートされるのです。
参考文献:Vitamin D Regulates Maternal T-Helper Cytokine Production in Infertile Women
一般的に、妊娠力が低下するとされるのが30代・40代。その理由や対処法については、次の記事が参考になりますよ。
30・40代の妊娠確率〜40代でも妊娠しやすい人の特徴と妊娠力を上げるポイント4つ~
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【妊娠初期】流産リスクを下げ、出生率を上げる
不妊治療を受けている女性の着床率、妊娠率、出生率、化学流産率、自然流産率とビタミンD血中濃度の関係を調査した研究結果を見てみましょう。イギリスで行われた調査です。
着床率・妊娠率・出生率においては、オレンジで示されるビタミンD血中濃度が高いほど、よい結果が得られています。
逆に、青色のビタミンD血中濃度の低い群においては流産率が高くなる傾向も確認できました。
ビタミンDは、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの早産リスクを高める病気の予防効果も見込めます。妊娠力と妊娠の継続をサポートし、妊娠中に起こる病気の予防にも役立つ重要な栄養素といえるでしょう。
参考文献:Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a prospective cohort study
ビタミンDはいつからどれくらい摂る?
ビタミンDは子どもを授かりたいと思った日から、一日の目安量を意識して摂取しましょう。受精卵の着床を成功させるには、妊娠前から体内のビタミンD濃度を高めておく必要があるからです。
ビタミンDの摂取目安量
目安量(μg/日) | 耐容上限量(μg/日) | |
---|---|---|
18歳以上の女性 | 8.5 | 100 |
妊娠中の女性 | 8.5 | 100 |
ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を促進し、健康で丈夫な骨を維持する栄養素として知られています。
太陽光を浴びることでビタミンDが生成される、という話を聞いたことはありませんか?
厚生労働省が指定する食事摂取基準では、日光による生成分を差し引いた目安量が示されています。
オフィス仕事や在宅勤務などで太陽の光を浴びることが少ない人は、目安量より多くのビタミンDを摂取することを心がけましょう。
なお、ビタミンDは油に溶けやすいビタミンで体の中に蓄積されやすいため、摂取量の上限として「耐容上限量」も設定されています。
ビタミンD以外の妊活中に摂取すべき栄養素については、次の記事で詳しく紹介しています。
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反対にビタミンDを摂りすぎたらどうなる?
ビタミンDを摂りすぎると、高カルシウム血症の症状があらわれます。
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が非常に高くなる病です。のどの渇き、多尿、消化管の不調があらわれ、重症化すると錯乱、昏睡におちいることがあります。
摂取に気をつかうあまり、サプリメントなどでビタミンDを摂りすぎてしまわないように注意が必要です。
摂取量が100µg/日以下であれば健康を害する心配はない
実は、太陽の光によるビタミンDの生成量は体内で調節されていて、必要以上のビタミンDは生成されません。安心して日光浴をしてください。
万が一、高カルシウム血症が起きても、ビタミンDの活性化が抑制されて症状の悪化は防げます。
また、ビタミンDの耐容上限量は100µg/日に設定されています。これは、250µg/日未満では高カルシウム血症の報告がないためです。
妊婦を対象として毎日100µgのビタミンDを摂取した研究においても、高カルシウム血症を含む健康障害は認められていません。そのため、妊婦も成人と同じ 100µg/日が耐容上限量とされています。
ビタミンDは、1日の目安量を守って摂取していれば、取りすぎの心配はありません。もし心配な症状がある場合は他の病気が隠れている可能性もあります。医師に相談してくださいね。
参考文献:厚生労働省
日本人はビタミンD不足が多い
「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、30〜39歳のビタミンDの平均摂取量は5.2μg/日。目安量である8.5μg/日にはまったく足りていません。
同じ資料で日本人の平均摂取量は6.9μgと報告されていて、実は日本人全体でビタミンD不足が問題視されているんです。日本人は欧米人のようにサプリメントを摂取する習慣が少ないことも原因として挙げられています
妊活・妊娠中はとくに、ビタミンDの適正な摂取を意識したいですね。
参考文献:令和元年国民健康・栄養調査報告
ビタミンDの効果的な摂り方
ビタミンDの必要性がわかっても、どうやって摂ればいいのかが気になりますよね。ここでは、必要量を摂取するための具体例を見てみましょう。ビタミンDを効率的に摂る方法も紹介しますよ。
日光浴をする
ビタミンDは日光浴をすることで体内につくられます。適度な日光浴で体内にビタミンDをつくりましょう。
ただし、日差しの強さは緯度や季節によって違うため、1日に何分日光浴をすればよいかはお住まいの地域によって異なります。
ある研究によると、5.5μgのビタミンDを生成するのに必要な日光浴の時間は以下の通りです。
測定地点 | 7月 12時 | 12月 12時 |
---|---|---|
札幌 | 4.6分 | 76.4分 |
つくば | 3.5分 | 22.4分 |
那覇 | 2.9分 | 7.5分 |
※雲一つない天候で、顔や手の甲に相当する皮膚面積で日差しを浴びることを想定
ビタミンDの目安量を設定する際、日光浴によるビタミンDの産生量は5μg程度と考えられています。お住まいの地域と近い測定地点を参考に、5μg程度を目安に日光浴をしましょう。
参考文献:The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan
ビタミンDが豊富な食材を食事に取り入れる
ビタミンDは日光浴のほか、食事から摂取するのが基本です。ビタミンDは魚類やキノコ類に多く含まれ、肉類、卵類、乳製品からも摂取できます。
ここでは、ビタミンDを豊富に含む食材をご紹介します。
食品名 加工状態など(100gあたり) | ビタミンD含有量(μg) |
---|---|
かつお塩辛(酒盗) | 120.0 |
あん肝 生 | 110.0 |
しらす干し | 61.0 |
いくら(しろさけ) | 44.0 |
べにざけ | 33.0 |
まいわし | 32.0 |
そうだがつお | 22.0 |
うなぎ 蒲焼き | 19.0 |
さんま 皮付き・生 | 15.7 |
まあじ 皮付き・生 | 8.9 |
※文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」をもとに作成
ビタミンDを多く含む魚類には、さんまやいわしなど食卓におなじみの魚が並びます。100gの目安としては、小さなさんまがおよそ120g、うなぎの蒲焼だと2/3尾です。
かつおの酒盗やしらす干しなどの加工食品からも摂取できますが、食塩やその他の添加物を同時に摂取することになるので注意してください。食塩は妊娠高血圧症候群の原因にもなるので控えめにしましょう。
サケ、マグロ、サバなどの脂肪性の魚や魚類肝臓にも、ビタミンDが豊富に含まれています。
一方で、お刺身などの生魚は、食中毒やアニサキスなどの寄生虫が心配です。妊娠中は免疫力が低下することもあり、慎重に摂取してくださいね。
こちらは、主なキノコ類の可食部100g当たりのビタミンD含有量です。
食品名 加工状態など(100gあたり) | ビタミンD含有量(㎍) |
---|---|
干し椎茸 乾燥 | 12.7 |
舞茸 生 | 4.9 |
えりんぎ 生 | 1.2 |
えのき 生 | 0.9 |
※文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」をもとに作成
キノコ類は低カロリーで食物繊維も豊富。便秘がちな妊娠中にはぜひ摂取して欲しい食品です。さまざまなほかの食材とも一緒に摂れ、調理方法も選べるので、食べ飽きることがないのでうれしいですね。
干ししいたけは1個当たり大きいもので4.5g、小さいものだと1.5gです。100g食べようと思うと大きいものだと22個、小さいもので66個になります。生しいたけはスーパーで売っている1パックが約100gです。
このことから、キノコだけで必要なビタミンDをすべて摂取しようと思うと難しそうですね。魚などと一緒に摂るか、サプリメントの併用を検討しましょう。
妊活中には、ビタミンD以外にもさまざまな栄養素が必要です。妊活中におすすめの食べ物については次の記事が参考になりますよ。
妊活中におすすめの食事や避けたい食べ物はある?必要な栄養素を知って妊娠しやすいカラダをつくろう【助産師執筆】
妊活中は食事が非常に重要。妊娠しやすいカラダづくりや今後授かる赤ちゃんのために、食生活を見直していく大切な時期です。栄養素の中には妊活中の男女をサポートしてくれるものもたくさんあります。必要な栄養素を積極的に取り入れて、妊娠しやすいカラダをつくっていきましょう!
手軽に摂るならサプリメントがおすすめ
上で紹介したように、食事だけで必要なビタミンDを摂るのは大変なもの。「妊活はしているものの、仕事が忙しくて毎日の食事にまで気をつかっていられない」という人も多いでしょう。
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