更新日:2024/4/30

葉酸以外に必要な栄養素「ビタミンB12」| 助産師監修

ビタミンB12のイラスト
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妊娠中に大切なビタミンB12の効果や摂取方法を解説。

DNAや血液、神経系に影響し、乳幼児の発育にも関わる重要な栄養素です。

この記事に登場する専門家

助産師 四辻有希子

大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。

〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター

ビタミンB12はどんな栄養? 

ビタミンB12は、鉱物であるコバルト(Co)を含むビタミンで、広義で「コバラミン」と呼ばれています。

水やエタノールに溶けやすい水溶性で、さらに熱に対して安定しているのが特徴です。


食品中のビタミンB12はタンパク質と結合しており、ビタミンB12が体内に入ると、まず胃で結合していたタンパク質が胃酸やペプシンによって引き離されます。

そのあと、ビタミンB12は、胃から分泌される糖たんぱく質「内因子」と結びつきます。


最後に、内因子が結合したビタミンB12が小腸で吸収されるというのが、ビタミンB12の吸収メカニズムです。

ビタミンB12は、内因子がないと体内に吸収できません。

小腸の吸収機構が飽和すると、内因子の分泌が抑制され、ビタミンB12の吸収が調整されます。


結果として、内因子と結合していないビタミンB12は、小腸で吸収されず体外に排出されるのです。

そのため、食事やサプリメントなどでビタミンB12を摂りすぎたとしても、体が自動的に吸収量を調整してくれるので、摂りすぎで健康障害がでることはありません。

また、ビタミンB12は体内にしっかり貯蔵されており、さらに腸肝循環して回収・再利用もされています。

このことから、偏った食生活でない限り、ビタミンB12は過不足しにくい栄養素といわれています。

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ビタミンB12の役割は?

ビタミンB12の役割は大きく3つあります。

  1. DNAの生成のための補酵素
  2. 神経機能の正常化(脳からの指令を伝える神経を正常に保つ)
  3. 葉酸と協力してヘモグロビンの合成


上記のことから、ビタミンB12は生命維持のために重要なビタミンのひとつといえるでしょう。

不足しにくい栄養素とはいえ、足りなくなってしまうとさまざまな支障をきたすおそれがあるので注意が必要です。


また、小児期にビタミンB12が不足すると、精神や運動の発達面で遅れがでる場合があるため、成長期の子どもにとっても大切な役割を担っているといえるでしょう。

生まれてくる赤ちゃんは、母体からビタミンB12を受け取り、肝臓に蓄えて生まれてきます。


妊娠中の女性に十分なビタミンB12があれば、きちんと赤ちゃんに届けられるので安心してくださいね。

ビタミンB12はいつ必要?

DNAの生成を助けたり、脳の神経機能を正常化させたりと、どの年代でも重要な栄養素といえるビタミンB12。

前述した通り、特に適切に摂取してほしいのが、妊娠中と授乳中の女性です。


妊娠中は胎児にビタミンB12を送る必要があるため、妊娠や授乳をしていない女性よりも多くのビタミンB12を消費します。

母親にビタミンB12が不足していると、胎児もビタミンB12不足になる可能性が高まるため注意が必要です。


また、ご存じの通り、母乳にはたくさんの栄養素が含まれています。

ビタミンB12は特に初乳に多く含まれているため、妊娠中から授乳期まで不足しないように気をつけたいですね。

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ビタミンB12はどれぐらい摂取すればいいの? 

女性のビタミンB12の摂取基準量

ここで、ビタミンB12をどれくらい摂取すればよいかを見てみましょう。

妊娠や授乳をしていない成人女性で、ビタミンB12は1日に2.4㎍摂取するのが望ましいといわれています。


前述した通り、妊娠中は胎児へ、授乳中は母乳へとビタミンB12が使われるため、妊娠中の女性は2.8㎍、授乳中の女性は3.2㎍と、摂取基準量が増えています。


「令和元年国民健康・栄養調査結果」によると、男女合わせた1日のビタミンB12摂取量は平均6.3㎍と、食事摂取基準を大きく上回っています。

摂取量は、魚介類→肉類→乳類・卵類の順に多いようです。

授乳中の女性の中央値は3.3㎍と、食事摂取基準を一応クリアしていますが、授乳中の女性は意識的に摂取すると良いでしょう。

ビタミンB12を含む食べ物

ビタミンB12はタンパク質と結合しているため、タンパク質を含む動物性食品に多く含まれています。

食品中のビタミンB12の吸収率は50%程度で、比較的効率が良いといえるでしょう。


前述した通り、ビタミンB12は過剰摂取してしまっても、生理的に吸収されずに体外に排出されます。

そのため、摂りすぎを気にする必要はありません。ビタミンB12の多い食べ物は以下の通りです。

【ビタミンB12の多い食べ物】

  • しじみ
  • あさり
  • さんま
  • のり
  • 牛レバー
  • 鶏レバー
  • うずらの卵
  • 生卵
  • チーズ


牛レバーと二枚貝は、ともに最良のビタミンB12供給源といわれています。

なぜなら、牛レバー100gあたり53㎍、生のあさり1個あたり52㎍のビタミンB12が含まれているからです。


食事摂取基準が一番高い授乳中の女性でも、1日3.2㎍の摂取で良いので、牛レバーと二枚貝なら少量で基準値をクリアできますね。

ただし、レバーはビタミンAも多く配合されてしまっているため、妊娠中には摂取に注意が必要です。

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一方チーズや卵などは手軽に手に入り、調理しやすいためおすすめです。

プロセスチーズなら1切れ(18g)を食べるだけで、ビタミンB12を3.2μg摂取でき、卵黄1個(16g)でも3.5㎍摂取できます。


ビタミンB12は、吸収率が高く身近な食材に多く含まれるため、比較的食事摂取基準を満たしやすいビタミンといえるでしょう。

生で食べられるものはそのままで良いですが、水に溶けやすく熱にも強いビタミンなので、スープなどの丸ごと食べられる調理法もおすすめです。


魚介類の缶詰なら、中身だけでなく汁も使うと栄養素を無駄にすることなく使い切れますよ。

動物性食品や魚介類が苦手な人は、サプリメントでの摂取も検討してみると良いでしょう。

ビタミンB12が不足すると・・・

ビタミンB12が不足しやすい人とは?

ビタミンB12は食事から取り入れるだけでなく、腸内細菌も合成できるため、不足することはあまりないといわれています。

ただ、以下の人はビタミンB12が不足しやすいため注意が必要です。

【ビタミンB12が不足しやすい人】

  • 病気で胃を摘出している人
  • 慢性的に胃炎がある人
  • 高齢者
  • 厳格なベジタリアンやヴィーガン


病気で胃を摘出している人や慢性的に胃炎がある人は、内因子の分泌不足によって、ビタミンB12を摂取しても体外へと排出されてしまうため、ビタミンB12が不足しやすいです。


また、高齢になると、ビタミンB12の貯蔵量が減少し、かつ内因子の分泌不足などで吸収不良になりやすいといわれています。

動物性食品を食べないベジタリアンやヴィーガンの人も、ビタミンB12を摂取する機会がないため、ビタミンB12が不足しやすいです。

ビタミンB12が不足すると?

では、ビタミンB12が不足すると、どのような不調が起こるのか見てみましょう。

【ビタミンB12不足で起こる不調】

  • 疲労
  • 体力低下
  • 便秘
  • 造血作用がうまくいかず巨赤芽球性貧血になる
  • 脊髄や脳の白質障害
  • しびれ
  • 知覚異常


ビタミンB12は、赤血球の細胞骨格を維持するために必要な栄養素です。

そのため、不足すると血液がうまく作れず貧血になる可能性があります。ビタミンB12または葉酸が不足するとなる貧血を「巨赤芽球性貧血」と呼び、それが原因で疲れやすくなったり、体力が低下したりといった体の不調が起こるのです。

また、ビタミンB12は神経機能を正常化させる役割も担っているため、不足することでしびれなどの末しょう神経障害や脊髄や脳にまで影響を及ぼしかねません。さらに…

  • 平衡感覚障害
  • うつ病
  • 認知症
  • 記憶の低下

など、の症状がでることも報告されています。


神経系を損傷してしまうと、体内のビタミンB12量が正常になったとしても、元には戻らない可能性もあるため、ビタミンB12不足に早期に気づき、治療を開始する必要があるでしょう。

また、乳幼児がビタミンB12不足になると…

  • 発育障害
  • 運動障害
  • 特有の成長遅延
  • 巨赤芽球性貧血

になる可能性があるといわれています。


そもそも、健康体のお母さんから生まれてくる赤ちゃんは、胎児のときにお母さんのビタミンB12を受け取って生まれてくるため、ビタミンB12不足にはなりにくいです。

このことから、妊娠中~授乳中の女性は、赤ちゃんがビタミンB12不足にならないよう、日々の食事に気をつけることが大切でしょう。


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まとめ

DNAの生成や神経機能、ヘモグロビンの合成など、人の生命維持に大きな役割を担っているビタミンB12。

多くの動物性食品に含まれ、吸収率も高いため不足しにくい栄養素といえますが、ビタミンB12不足になると巨赤芽球性貧血や神経系に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。


また、乳幼児の場合、発達遅延が起こることもあるので、妊娠中~授乳中の女性は、不足しないように食生活に気をつけましょう。

摂取が難しい人は、サプリメントも活用しながら健康に過ごしてくださいね。

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