更新日:2024/4/30
妊娠中は鉄分不足に注意!葉酸以外の重要な栄養素「鉄分」
妊娠中には、葉酸をはじめ大切な栄養素がたくさんありますが、その中の一つに「鉄分(鉄)」が含まれていることを知っているでしょうか?
鉄分は、貧血の改善や赤ちゃんの成長に重要な役割を持ち、厚生労働省の食事摂取基準でも積極的な摂取を推奨しています。
しかし知らない人も多く、必要な鉄分の量を摂れている人は少ないのが現状です。
そこで今回は「なぜ妊娠中に鉄分が大切なのか?」その理由をご紹介します。
鉄分の上手な摂り方や、妊娠中に気を付けたい鉄分不足とその対策方法も詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです!
この記事に登場する専門家
助産師 四辻有希子
大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。
〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター
【助産師監修】妊娠初期に葉酸を飲まなかったけど大丈夫?赤ちゃんへの影響と今から摂ったほうがいいのかも解説!
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鉄分(鉄)とはどんな栄養素?
「鉄分(鉄)」とは、ヘモグロビンの構成に必要なミネラルです。
※栄養学的には「鉄分」ではなく「鉄」を用語として使いますが、この記事ではおもに「鉄分」と表記していきます。
ヘモグロビンは、タンパク質で血液の主成分である赤血球に含まれています。
「鉄(ヘム)」と「タンパク質(グロビン)」が結合したものです。ちなみに血液は鉄が赤色素をもっているため赤色をしています。
次に赤血球について、酸素を酸素分子と結びついて体中に運ぶのが仕事です。酸素は、人が生きるためのエネルギーを生み出しています。
つまり鉄分は、妊娠中に限らず「人が生きるために重要な栄養素」ということです。
ここからは、鉄分の特徴について詳しくご紹介していきます。
鉄分の特徴「体内では作られない」
鉄分は、体内で生成することができません。でも体内には持っています。
体内の鉄分量は、体重60kgの男性で約3g、体重50kgの女性で約2.5gです。
約66.7%はヘモグロビンに、10%はミオグロビン(筋肉)に、残りは肝臓、脾臓、骨髄、腸に貯蔵し、すぐに取り出せるようにしていたり、再利用されたりしています。
1日1mg程度(成人男性の場合)尿や便からも排出していることや、摂取しても増やすために数ヶ月〜1年かかることから、食事などから日常的に摂ることが必要です。
必要な鉄分が摂取されないと、体は貯蔵された鉄を使い、足りなくなると貧血になる可能性があります。
鉄分の役割「ヘモグロビンやミオグロビンを作ること」
鉄分の役割は、ヘモグロビンやミオグロビンを作ることです。
鉄とタンパク質でできている「ヘモグロビン」は、鉄分が無くてはつくられません。
また骨格筋や心筋で酸素の配達や貯蔵する「ミオグロビン」というタンパク質も鉄で作られています。
そのほかに、エネルギーを効率的に生み出す「チトクローム(シトクローム)」という酵素の一部としても役立っています。
最初の鉄分とヘモグロビン、赤血球、酸素の関係をお伝えしましたが、例えるなら、赤血球は酸素を運ぶトラックで、トラックの一部はヘグロビンでできているといったところでしょうか。
体内の鉄分が不足すると赤血球内にあるヘモグロビンは減り、酸素の配達は上手くできなくなってしまいます。ミオグロビンも同様に減少します。
この状態を「鉄欠乏性貧血」といいます。
このように鉄分は、ヘモグロビンやミオグロビンを作り生命を維持する、重要な役割を持つ栄養素なのです。
妊娠中は多くの鉄分が必要
エネルギー生成に必要な酸素の運搬に一役買う鉄分は、老若男女問わず必要ですが、特に妊娠中は多くの鉄分が必要です。
鉄分は、母体の血液量が増加したり胎児の成長にも必要だったりと、妊娠中において重要な栄養素になります。
妊娠中期~後期はとくに大切!
中でも、妊娠中期から後期の女性は、初期に比べ2倍以上の鉄分が必要で、特に大切な栄養素になります。
その理由は、以下の2つです。
- 妊娠中の女性は血液量が増えるから
- 母体から胎児へ鉄を供給する必要があるから
妊娠中の女性は、血液量が増加します。
妊娠5カ月~7カ月(16週~27週)の「妊娠中期」と、8カ月~10カ月(28週~39週)の「妊娠後期」は、お腹の中で赤ちゃんがどんどん育ち、体の血液量が増えていきます。
その量は、28週〜36週頃で妊娠前の1.5倍になっているといわれているほどです。
血液量が増えると、赤血球も増やさなければなりません。
加えて鉄分は、赤ちゃんの成長にも必要だったり、臍帯と胎盤に貯蔵したりと多くの量が使われます。
つまり、多くの鉄分が必要ということです。
かく言う筆者も、鉄分不足で検査に引っかかった事があり、反省した経験を持つ1人です。
重要な妊娠中の鉄分の摂取については、厚生労働省の食事摂取基準でも積極的に摂るよう推奨しています。
妊活におすすめの食べ物は?
どれぐらい摂取すればいいの?
30~49歳の女性の場合 | 鉄の食事摂取基準 推奨量 |
---|---|
妊娠なし(月経あり) | 10.5mg/日 |
妊娠初期 | 9mg/日 |
妊娠中期~後期 | 16mg/日 |
授乳中 | 9mg/日 |
上記の表は、厚生労働省が発表している、鉄分の食事摂取基準の推奨目安です。
年齢や性別、妊娠・授乳の有無、月経の有無などの条件によって数値が異なりますので、30~49歳の女性の場合を例に取り上げました。
妊娠なし且つ、月経ありの場合が1日10.5mgに対して、鉄分が大切な時期である妊娠中期〜後期は、必要な量が16mgまで増加します。
妊娠初期の場合に授乳中と同じ9mgとされているのは、妊娠中は月経が止まり、赤ちゃんもまだ小さく多くの鉄分を必要としないためです。
それでも30代女性が食事から摂る鉄分の量は平均で6.8mg、妊娠中の女性は6.3mgとさらに低い数値が発表されています。
現実は推奨目安に足りておらず、摂取すべき鉄分の量を大きく下回っている現状です。
■30代女性の栄養摂取状況
妊娠中に鉄分が不足してしまうと、母体や胎児の死亡リスクや早産、低出生体重児が生まれるリスクが上昇すると発表されています。
また鉄分の特徴でお伝えしましたが、体内での生成はできませんので、積極的に食品から摂ることが必要です。
体内吸収率(食べ物に含まれている栄養素が吸収された割合)があまり良くないため、食事だけでなく鉄分を含むサプリメントでの摂取も検討してみるのも良いでしょう。
鉄分は2種類!ヘム鉄・非ヘム鉄とは?
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。
「ヘム鉄」は動物性食品(牛や豚、鶏、魚など)に、「非ヘム鉄」は植物性食品(ほうれん草や小松菜、プルーンなど)に含まれています。
またヘム鉄と非ヘム鉄は、体内での吸収率が大きく違いますので、それぞれについてと一緒に摂るとよい栄養について順に詳しくご紹介します。
ヘム鉄
鉄とポルフィリン環により形成される「ヘム鉄」。
ヘム鉄は、もともとタンパク質にくるまれて吸収されやすい形になっています。
比較的吸収されやすいのが特徴で、吸収率は10〜20%です。
動物性食品はヘム鉄を多く含み、そのなかでも鶏や牛のレバーや赤身肉など、濃い色の肉には比較的多く含まれています。
また赤身の魚や、あさりの水煮などの貝類にも多く含まれているので、いろんな食べ物から摂取できます。
ヘム鉄が多く含まれる食品
- 豚レバー
- 鶏レバー
- 牛レバー
- 牛ヒレ肉
- カツオ
- マイワシ
- 鶏卵
- あさり
- カキ など
非ヘム鉄
「非ヘム鉄」の吸収率は、ヘム鉄と比べると低く2~5%です。
摂り方を工夫することで効率良く摂取でき、ビタミンCや動物性タンパク質、クエン酸といっしょに摂ると吸収率がアップするという研究結果がでています。
非ヘム鉄が多く含まれている食べ物は、小松菜やほうれん草、枝豆などの野菜や、日本食でよく食べられている豆類や海藻類があります。
非ヘム鉄が多く含まれる食品
- 小松菜
- ほうれん草
- 枝豆
- そら豆
- 乾燥ひじき
- 豆乳
- 厚揚げ など
鉄分を効率良く摂取するには?
先ほどヘム鉄と非ヘム鉄の吸収率の違いをお伝えしましたが「吸収率の高いヘム鉄から摂ればいいのでは?」と思われた人もるかもしれません。
しかし日本人が食事から摂る鉄分の85%以上は非ヘム鉄です。吸収率をアップさせるには、ポイントがあります。
ポイント
- 鉄分の吸収を助ける食べ物といっしょに食べること
- 吸収を妨げる食べ物をいっしょに食べないこと
CPP(カゼインホスホペプタイド)は、牛乳などに含まれるタンパク質です。一緒に摂るとタンパク質が鉄分と結びつき、腸での吸収を促進させる効果が期待できます。
還元作用で鉄分を吸収されやすい状態に変える効果があるのは、野菜や果物に多く含まれるビタミンCです。トマトやブロッコリー、キウイなどがビタミンCが豊富な食べ物の代表です。
ほかにクエン酸などの果実酸も「キレート作用」という、鉄分などのミネラルを包み込んで吸収しやすくしてくれます。
一方、紅茶やコーヒーなどに含まれるタンニン、ライ麦や玄米に含まれるフィチン酸、イモ・きのこ類などに含まれる非水溶性食物繊維は、非ヘム鉄の吸収を妨げるといわれています。
(ヘム鉄の場合は気にしなくてよいという意見もあります。)
メニューを工夫して効率的な鉄分摂取ができるのが望ましく、ヘム鉄と非ヘム鉄どちらもバランス良く摂るようにしましょう。
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妊娠中の鉄分不足で気を付けたい2つのこと
妊娠中の鉄分不足で気を付けたいのが「鉄欠乏性貧血」です。
赤血球のヘモグロビンの数が減少し、酸素が十分に運べなくなる状態をいいます。
妊娠中はもちろんですが、妊活期や産後、どのステージでも鉄分は大切です。鉄欠乏症貧血は、初めは無症状の人も多く気がつきにくいかもしれません。
鉄欠乏性貧血になると、体の健康を保てなくなるだけでなく心にも不調が表れることがあります。
とくに妊娠前と妊娠初期〜後期の予防は重要で、胎児や出産に影響する場合があり、注意が必要です。
鉄欠乏性貧血に注意!|その1 身体の心の不調
鉄分不足は「原因はよくわからないが、なんとなく体調が悪い」という不定愁訴(ふていしゅうそ)と深く関係しています。
また妊娠中や産後の鉄分不足は、早産や出産後の赤ちゃんの発育などに影響が出る危険性が高まり、産後うつにも深く関わりがあるともいわれます。
先にお伝えしたように、妊娠中は想像以上に多く鉄分が消費され、多くの鉄分が必要です。
鉄欠乏性貧血が進むと、動機やめまい、息切れ、頭痛、倦怠感などの自覚症状が現れます。
さらに出産では母体から多くの血液が失われるため、貧血はますます悪化することが予想され、その結果、産後うつを発症する可能性もあるのです。
重度の場合は、産後に体力の回復が悪くなったり、母乳の出が悪くなったりなどの影響が出ることもあります。
鉄欠乏性貧血に注意!|その2 早産や胎児の発育遅延のリスク
鉄欠乏性貧血になると、早産や胎児の発育遅延のリスクが高まり、妊娠高血圧症候群のリスク因子の1つである可能性も指摘されています。
妊娠高血圧症候群の主な症状は、性器出血や腹痛、胎動の減少などです。
また母体だけでなく、子どもへの影響も大きくなります。
お腹の中の赤ちゃんの通常、赤ちゃんは生後~6カ月までで使う鉄分を貯蔵して生まれてきますが、母体の鉄分が不足していると、生まれてきた赤ちゃんに貯蔵されている鉄分が少ない可能性もあるのです。
さらに出産後の「乳児期」は、一生の中で最も細胞が増える時期といわれます。
赤ちゃんの脳神経はこの時期に形成されていきますが、栄養素不足で神経細胞がうまく形成されないと、認知発達障害や行動発達障害が残る可能性があると考えられているのです。
ママさん自身や生まれてくる赤ちゃんのためにも、鉄分を積極的に摂取できる食生活を心がけていきましょう。
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妊娠中は鉄分不足に気を付けよう。サプリも効果的!
妊娠中の女性と赤ちゃんにとって、特に重要な栄養素である「鉄分」。
妊娠中は特に鉄分が必要なため、きちんと摂取しているつもりでも、気づかないうちに鉄分不足になっていることも多く注意が必要です。
毎日食べ物から鉄分を摂取することが望ましい鉄分ですが、体内吸収率の低さや、摂取してもすぐには増えない仕組みから、普段の食事だけで適量の鉄分を摂るのはなかなか難しいともいわれています。
そこで効率的に鉄分を摂取するために、食事とあわせてサプリメントで上手く補うのがおすすめです。
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参考文献:
市立御前崎総合病院コラム
e‐ヘルスネット「鉄」
e‐ヘルスネット「Hb」
日本人の食事摂取基準(2020年版)
eJIM「鉄」
東京都国民健康保険団体連合会
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