更新日:2024/4/30
不妊治療の保険適用をわかりやすく紹介!気になる条件や費用は?【最新版】
不妊治療が保険で受けられることを、知っていましたか?
これまで保険がきかなかった不妊治療でしたが、現在は保険で治療が受けられるようになりました。
保険適用になったことで、不妊に悩んでいる人だけでなく、これから妊娠を望む人にとっても不妊治療は身近になりつつあります。
「どんな不妊治療が保険でできるの?」
「保険で費用はどれくらいになるだろう。」
「不妊の治療は誰でも保険がきくの?」
いろいろな疑問や不安がありますよね。
そこで今回は、保険で受けられる不妊治療の範囲や条件、治療費の目安を詳しくわかりやすくご紹介します。
保険以外にも受けれるお金の制度や、保険適用のメリットデメリットなどもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事に登場する専門家
医療従事者ライター 宇津木
妊活経験を持つ40代。2人の子の出産を経て、現在子育て中。また総合病院で医療に関わる仕事をし、患者サポートを行う医療従事者でもある。30~40代の女性ならではの視点で、健康食品やサプリ、ファッション、ライフスタイルなど数々の記事を手がける。
不妊治療が保険適用で3割負担に
不妊治療は、2022年4月から健康保険(公的医療保険)が適用されることとなり、窓口での支払い金額が3割負担となりました。
それまで、ほとんどの不妊治療は自費診療(自由治療)で、保険の適用にはならず全額を支払っていましたが、現在は保険の範囲が大幅に拡大されています。
実は保険適用になる前も、男女ともに診察や検査、不妊の原因がわかっている治療だけは保険適用とされていました。
ただ原因がわからない場合の治療費は、保険適用にならず窓口負担は「全額」。
不妊を悩む人にとってかかる治療費のことは、不安や悩みの一つでした。
一般的に不妊治療は、タイミング法や人工授精、体外受精、さらに顕微授精という選択もあり、段階的にステップアップし同時に治療費もあがってしまいます。
2022年4月から実施された不妊治療の保険適用は、負担金額の面だけでなく、少子化対策にもなるとして、現在も関心を向けられています。
下の記事では、妊活中によくあるお悩みについて、解決策と共にまとめています。
先が見えずに不安を抱えている方もいらっしゃると思いますが、1人ではありません。
この記事が未来のママさんへの一助となれば嬉しいです。
妊活中によくある相談・お悩み | 助産師監修
医師監修による妊活中の悩み解決:親族との関係、夫婦問題、職場での悩み等を取り上げ、解決策を提案しています。ぜひ妊活中の方はご一読していただき、ストレスフリーな妊活ライフを目指しましょう。
保険適用の範囲や制限・申請方法は?
不妊治療で保険が適用される治療範囲や、年齢や回数、必要な準備をわかりやすくご紹介します。
治療の範囲
- New!原因がわからない不妊
- New!治療の効果が確実ではない、体外受精などの不妊治療
- 不妊の原因を調べるための検査
- 不妊の原因がはっきりわかっていて、その症状に対する治療
なお不妊治療で保険適用を受けることができる人は、基本的には検査等で不妊症と医師が診断した場合のみです。
年齢・回数の制限
人工授精の場合は、年齢や回数制限はありませんが、体外受精の場合は、女性にのみ年齢と回数制限があります。
- 年齢
治療開始時に女性の年齢が43歳未満であることが定められています。
- 回数制限
1子ごとの通算の回数上限が定められています。
40歳未満であれば、通算6回。
また40歳以上43歳未満であれば、通算3回です。
※保険適用前の助成金の支給回数は、回数の計算に含まれません。
申請方法
保険で不妊治療を受けるには、医療機関へ提出する書類と医療機関から提示される書類への同意の2つが必要です。
1.婚姻関係の証明
婚姻関係の証明とは、法律婚なら「戸籍謄本・抄本」もしくは、3ヶ月以内の「婚姻届受理証明書」をさします。
医療施設へ提出し、婚姻関係確認書に夫婦2人で署名が必要です。
2.治療計画書への同意
治療計画書は、検査をした後に医師が不妊症と診断し治療方法を書き出した書類です。
治療方針の確認と説明を受けた上で、基本的には夫婦2人で同意へサインをする必要があります。
保険でかかる不妊治療の目安は?
不妊体験者を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」の調査(2018年度)によると、保険適用前の不妊治療費の総額が100万円以上という人の割合は56%でした。
それが保険が適用され3割の支払いで済めば、負担は大きく変わります。
例えば、人工授精や体外受精の場合で計算してみましょう。
人工授精の場合、保険が適用されず全額負担であると1回18,200円です。
しかし保険適用で5,460円へと変わります。
体外受精はどうでしょうか。
体外受精の場合は、金額の算出は単純ではなく細かな技術ごとに料金が示されています。
体内で育てた卵子を体外に取り出したり、卵子と精子を体外で受精させたり、さらに女性の子宮に移植したりといった手順があります。
培養の数によっても金額は変わってくるため、一概にはいくらと表しにくいですが、おおよそ1周期あたり窓口負担は30万円〜40万円ほどになるでしょう。
それでも決して安い金額ではありませんが、3分の1以下に減ったことを考えると大きく変わります。
不妊治療の保険適用料金の例(一部)
一般不妊治療
超音波検査 | 人工授精 |
---|---|
1回 1,590円 | 5,460円 |
体外受精治療
ホルモン検査 | 超音波検査 | 排卵誘発剤 |
---|---|---|
1回 約1,600~2,080円 | 1回 1,590円 | 約1万~3万円 |
受精方法
体外受精 | 顕微授精 | |||
---|---|---|---|---|
12,600円 | 1個 14,000円 | 2~5個 20,400円 | 6~9個 30,000円 | 10個以上 38,400円 |
出典:書籍「妊娠しやすい習慣から不妊治療のキホンまでよくわかる 妊活パーフェクトガイド 坂口健一郎」 株式会社クロスメディア・パブリッシング
不妊治療で保険適用されない治療もある
現在の不妊治療の保険適用とされていることから、
不妊治療や検査の多くが保険診療で行えるようになりました。
しかしあくまで、保険適用の拡大であるという点から、保険適用となる範囲は限られています。
保険が適用される治療がある一方で、保険適用が見送られた保険適用外の不妊治療があるということです。
不妊治療を受ける人の中には、症状に合わせて特殊な薬や最新の医療を保険適用になる前から長い期間治療を受けている人もおり、保険適用にならない治療である場合にはもちろん保険適用とはなりません。
またこれから不妊治療する人にとっても、治療内容や薬によっては保険がきかないものもあるというわけです。
不妊治療を保険適用範囲内で受けたいと考えている場合は、医師と相談の上、治療計画をしっかりと立てるとよいでしょう。
ところで、卵子凍結という言葉をご存知でしょうか?
聞いたことない方、聞いたことがあり興味がある方はぜひ下記の記事もご参照ください!
卵子凍結ってなに?卵子凍結が注目される理由と費用や方法【助産師執筆】
不妊治療の技術の一つである「卵子凍結」についてメリット・デメリット、具体的な方法から、費用、助成金の対象者についてもまとめていきます。
医療制度・医療費控除の申請もお忘れなく
保険が適用されて支払った金額に対して、一定の金額以上を支払っていると受けれる制度や控除があります。
事前にチェックしておきましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、決められた金額以上の支払いをしている時に、その分を本人が支払う必要がなくなる制度です。
上限金額は、加入している健康保険によって異なります。
また事前に手術や処置で支払う金額が多いことがわかっている場合でも、健康保険組合に「限度額適用認定証」の申請をすれば、限度額以上の金額は支払う必要はありません。
例えば月の所得が28~50万円の人の場合、自己負担限度額は9万円となり、それ以上の保険適用の治療費は支払う必要がなくなります。
医療費控除
医療費控除の申告をすると、控除の対象になります。
納税者が1年で一定以上の金額を医療費で支払っていれば、所得税などが軽減され、翌年の住民税が安くなるのです。
対象は多くの場合、保険適用でない医療費も含み、支払いした医療費が10万円を超えているときです。
(総所得金額などが200万円未満に人は、総所得金額の5%を超えた金額を超えたときが対象)
ただし「高額療養費」として支給された金額は除外されます。
医療費控除は不妊治療費だけでなく、他の診察で支払った医療費や薬代も含まれますので、合計10万円を超えたら確定申告で知らせましょう。
参考:全国健康保険協会 協会けんぽ「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
不妊治療の費用は、保険制度だけでなく他の制度や控除を受けることで、更に負担は変わります。
高額療養制度や医療費控除の詳細は、自身が加入している健康保険組合のサイトなどで確認しましょう。
不妊治療の保険についてよくある質問
Q1.保険適用されない医療機関もあるの?
あります。
保険診療を行う医療機関は、それぞれ各地方の厚生局に届出を行っています。保険診療を行っている医療機関の一覧が、厚生労働省のサイトで確認できます。
詳しい診療内容については、医療機関に聞いてみると安心です。
Q2.海外に在住している場合は?
一時帰国中に日本で不妊治療を受ける場合、日本国内で国民保険などの入っていなければ、保険は適用外になってしまいます。
加入については健康保険組合に確認をしてみるとよいでしょう。
Q3.事実婚は?
事実婚の場合も、不妊治療は保険適用となります。
ただし戸籍で婚姻関係の確認が取れないことから、必要書類は戸籍ではなく「同居の証明」や「身分証明書」が必要になることがあります。
Q4.中断したり再開したりできるの?
基本的には、保険で受けている不妊治療を中断したり再開したりすることができます。
受診する医療機関と相談するとよいでしょう。
Q5.適用前から治療している場合は?
保険適用となる2022年4月以前から、不妊治療を受けている場合でも、保険適用の条件を満たしていれば保険診療への切り替えが可能です。
必要書類の提出や治療計画書への同意が必要になります。
保険で不妊治療を受けられるメリット・デメリット
メリット1|経済的が負担が軽くなる
やはり大きなメリットの一つは、経済的な面で負担が軽減されることではないでしょうか。
先でご紹介したように、人工授精の金額だけで見ても、保険適用なら5,460円ですが全額負担となると18,200円です。
更に体外受精ともなると、費用は大きく変わります。
また保険適用となったことで、高額療養制度の対象にもなり支払い金額の上限がもうけられるようになりました。
今まで大きなハードルとされていた不妊治療にかかるお金の問題ですが、保険で受けられることで負担が軽くなったことがわかります。
メリット2|不妊治療にトライしやすくなる
不妊治療が保険適用となり、不妊治療を諦めていた人やこれまで抵抗があった人も治療を受けやすくなりました。
一つ目のメリットで紹介したように金銭的な面で不安を感じていた人だけでなく、これまで「不妊治療」そのものに抵抗を感じていたり、周りからの理解を得るのが難しかった社会的な面からも、不妊治療に挑戦しやすくなったという声が上がっています。
社会的理解が浸透し始めた背景から、近年では若い方の受診も増えていると言われています。
メリット3|施設ごとの金額差がなくなった
医療機関ごとの不妊治療にかかるお金の差が、保険適用になったことでなくなりました。
今まで自費診療であった不妊治療は、施設によって治療の方針や内容も様々で「標準」を決めるのが非常に困難でしたが、保険適用となった治療は、保険点数が決まり金額が標準化されています。
また施設ごとの金額差だけでなく、標準化で治療の内容や方針もわかりやすくなりました。
デメリット1|実質的に負担増になる人も
メリットが多い一方で、不妊治療が保険適用になったことで起きたデメリットもあります。
一つ目は、負担金額が多くなっている人もいる現状です。
今の制度では不妊治療の場合、国が認めた一部の先進医療以外は保険診療と自費診療を混ぜた「混合治療」が行えません。
保険診療と一緒に保険対象でない治療を行うと、本当なら保険対象になる治療も保険対象外になります。
そのため保険制度が活かせず、自己負担での支払いになってしまうのです。
また過去に自己負担していた人が活用していた助成制度も、保険範囲の拡大とともに終了したため、自費での不妊治療を受ける人の中には金銭面の負担が増えてしまっている人もいます。
保険適用外の治療を検討する場合には、民間の保険に加入するなど金銭面のカバーを検討するとよいかもしれません。
デメリット2|クスリの種類や回数の制限がある
デメリットの二つ目は、使える薬の種類や採血の回数、エコーの回数が限られてしまうことです。
不妊治療の保険適用になったことで治療方針の「標準化」され、同時に処方される薬の種類も限定されることとなりました。
保険適用内で治療をすることにこだわると、治療だけでなく薬の処方も限定されてしまいます。
また体外受精の場合は、エコー回数の上限も決められているため、保険治療ではできることがどうしても限られてしまうのが現状です。
自費と保険の治療内容の違いをしっかり把握したうえで、治療の方針を決めることをおすすめします。
医療施設へ相談してみるとよいでしょう。
これからの課題
2022年4月から始まった、不妊治療の保険範囲の拡大ですが、2年ほどだった今「保険がきいてよかった」という声が多い中「課題もある」とも言われます。
やはり大きな課題は、負担金額の差です。
デメリットでも紹介したように、保険診療と組み合わせた「混合診療」の場合は、全ての治療に保険がきかず自費扱いとなります。
一部は同じ治療を受けているにも関わらず、支払い金額が違い不公平さが否めません。
また不妊治療が保険適用となり、若くして治療を受ける人が増えた一方で、年齢にリミットを感じている人は、費用の差があるがゆえに、保険の範囲内で治療を進めるべきかどうかなど選択に迷うこともあるようです。
そこで現在では、助成金制度を復活させるのはどうかという声が上がるようになりました。
2024年4月には、不妊治療の保険制度の初めての見直しも予定されており、課題の改善に期待が寄せられています。
次の記事では、妊活中における葉酸の重要性を詳説しています!合わせてご覧ください!
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妊娠の確率を高めるにはなにができる?
ここまで、不妊治療の保険適用についてご紹介しました。
女性は年を重ねるごとに妊娠しにくくなることからも、まず早い受診をおすすめします。
しかし窓口負担が3割になったとはいえ、治療に費用がかかるのは変わらない事実です。
不妊治療を考える今だからこそ、少しでも早い妊娠の為にできることはないでしょうか。
例えば、赤ちゃんを授かるための「身体づくり」。
身体づくりは、適切な体重管理や栄養管理がポイントです。
日常生活の中で今すぐに妊娠に向けて始められます。
中でもバランスの良い食生活は特に重要です。
妊活中は普段以上に意識をしてみてほしい事の一つで、厚生労働省でも妊活中の時期に向けて摂取すべき栄養素のガイドラインを発表しています。
特に、積極的に摂取すると良いとされるのが「葉酸」です。
ビタミンB群の一種である葉酸は、胎児の成長に欠かせない栄養素で、不足していると胎児の先天性異常が起きるリスクが高くなるともいわれています。
そのため不妊治療を始める前であっても、妊娠を考える人にとって葉酸を十分に摂ることは、妊娠確率をあげる為に今すぐできることの一つです。
普段の食事に加えてサプリメントなどから安定した葉酸をとることを、厚生労働省もおすすめしています。
不妊治療の保険制度が理解できたら、早い受診とともに妊娠にそなえた身体づくりも一緒に行っていきましょう。
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