更新日:2024/11/18
【羊水検査を受けるべきか悩んでいる方へ】検査の詳細や受けるメリット・リスクを助産師が解説
赤ちゃんがお腹の中にいるうちに先天性の異常があるのかを知ることができる「羊水検査」。
特に35歳以上の妊娠では、ダウン症などの染色体異常が起きる可能性が高くなるといわれているため、自分の子は大丈夫なのか気になるママたちも多いと思います。
今回の記事では、羊水検査を受けるべきか悩んでいる方向けに、羊水検査とはどのような検査なのか、受けるメリットとリスクを助産師が解説していきます。
◉この記事でわかること
・羊水検査は受けた方がいいのか
・羊水検査の対象者とは
・羊水検査でわかること
・羊水検査を受ける時期、方法、費用
・羊水検査のリスク
この記事に登場する専門家
助産師 四辻有希子
大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。
〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター
羊水検査は受けた方がいいの?
羊水検査は、妊娠中にお腹の中の赤ちゃんに先天性の異常がないかを知ることができる検査です。
検査の結果によっては辛い思いをしたり、決め難い決断をしなければならないこともあります。
また、羊水検査自体にもママと赤ちゃん両方へのリスクがあります。
一方で、赤ちゃんの先天性の異常が早い時期にわかっていると、赤ちゃんにとって適切な医療やケアが提供できる環境を整える準備をすることができます。
「とりあえずお腹の赤ちゃんに異常がないか知りたい」といった安易な気持ちで羊水検査を受けることはやめましょう。
羊水検査とはどのような検査でなにがわかるのか、どんなリスクがあるのかを知った上で、自分たちにとって必要な検査なのかを夫婦で十分に話し合って、受けるかどうかを決めましょう。
かかりつけの医師だけでなく、遺伝カウンセラーなどの専門家に相談することもおすすめです。
赤ちゃんの障害に不安がある方に向けて、後悔しないために妊娠中にできることを解説している記事はこちらからどうぞ。
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羊水検査の対象となるのはどんな人?
羊水検査は誰もが簡単に受けることができる検査ではありません。
羊水検査にはリスクもあり、検査を受けることができる人は染色体異常が起きる可能性が高い方が対象となります。
具体的に羊水検査の対象となるのはどのような人なのかを解説していきます。
高齢の妊婦さん
下の表は、女性の年齢と子どもの染色体異常が起きる頻度を表したものです。(※1)
女性の年齢 | ダウン症の子が生まれる頻度 | なんらかの染色体異常をもつ子が生まれる頻度 |
---|---|---|
20 | 1/1667 | 1/526 |
25 | 1/1250 | 1/476 |
30 | 1/952 | 1/384 |
35 | 1/385 | 1/192 |
40 | 1/106 | 1/66 |
45 | 1/30 | 1/21 |
35歳の場合、1/192の確率で子どもになんらかの染色体異常が発生するといわれています。
ダウン症の子が生まれる頻度は25〜30歳の女性に比べると、35歳以上では3倍以上発生しています。
女性の年齢が上昇するとともに、赤ちゃんに染色体異常が発生する可能性は高くなります。
そのため、高齢の妊婦さんは羊水検査の対象となります。
高齢出産と赤ちゃんの障害のリスクについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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NIPTが陽性だった人
新型出生前診断という呼び名で有名な「NIPT」は、非侵襲性出生前遺伝学的検査といいます。
妊娠中にママの採血をすることで赤ちゃんに染色体異常がある可能性を調べることができるため、羊水検査に比べるとママと赤ちゃんにリスクが低いことから非侵襲性といわれています。
ただ、NIPTはあくまでも先天性異常がある可能性を調べる検査のため、確定診断はできません。確定診断をするためには羊水検査が必要になります。
そのため、NIPTが陽性だった妊婦さんは羊水検査の対象となります。
NIPTについては、こちらの記事もあわせて参考にしてください。
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夫婦のどちらか、または両方が染色体異常をもっている人
染色体の構造異常を持っている場合でも症状がないケースがあります。
不育症や流産を繰り返す場合に血液検査をすることで、夫婦のどちらかまたは両方に染色体異常が見つかることもあります。
染色体の構造異常は子どもに遺伝する可能性があるため、夫婦のどちらか、または両方が染色体異常をもっている人は羊水検査の対象となります。
染色体についてはこちらで詳しく解説しています。
染色体異常の子どもの出産経験がある人
ダウン症や18トリソミーなどの染色体の数の異常が遺伝することはまれですが、構造異常は遺伝する可能性があります。(※2)
染色体異常の子どもを出産した経験がある場合には、遺伝する可能性も考慮し、羊水検査の対象となります。
ダウン症について詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
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羊水検査でわかることは?
羊水検査は羊水を採取することで、赤ちゃん由来の細胞から染色体異常があるかどうかを調べることができます。
染色体とは、細胞の核に存在する遺伝子の集合体のことをいいます。
染色体は2本で1ペアになっていて、私たち人間の細胞の核の中には23ペア46本の染色体があります。1〜22番までの44本の染色体を常染色体といい、性別を決める2本の染色体を性染色体といいます。
この染色体に異常が起こることで先天性の病気が発症します。
常染色体の数の異常
本来、常染色体は2本で1ペアですが、その染色体の数が多かったり少なかったりすることがあります。1本の場合にはモノソミー、3本の場合にはトリソミーと呼ばれています。何番目の常染色体に異常がでるのかによって病気や症状が変わってきます。
- 21番目の常染色体が3本・・・ダウン症候群(21トリソミー)
- 18番目の常染色体が3本・・・エドワーズ症候群(18トリソミー)
- 13番目の常染色体が3本・・・パトウ症候群(13トリソミー)
性染色体の異常
性染色体は、X染色体とY染色体が1本ずつ(XY)の場合には男性、X染色体が2本(XX)の場合には女性となります。性染色体は通常2本ありますが、数が多かったり少なかったり、部分的に欠損している場合があります。
- X染色体が2本、Y染色体が1本(XXY)・・・クラインフェルター症候群
- X染色体が1本(X)またはX染色体の一部が欠損・・・ターナー症候群
- X染色体が3本(XXX)・・・トリプルX症候群
その他の病気
羊水検査では染色体の異常の他に、フェニルケトン尿症、筋ジストロフィーなどの先天代謝異常や遺伝子疾患がわかるものもあります。
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先天代謝異常とは?
食べ物などに含まれている栄養素はカラダのなかで消化・吸収されてエネルギーとして使われ、不要になったものは外に排出されます。このしくみを代謝といいます。
生まれつき代謝に必要な機能に異常がある病気を先天代謝異常症といいます。
代謝に異常があると、必要なものがカラダに取り込めなかったり、カラダにとっていらないものが排出出来ずに蓄積していくことで様々な症状を引き起こしてしまいます。
羊水検査の結果がわかったら
すべての病気がわかるわけではありませんが、羊水検査によって赤ちゃんの病気を事前に把握しておけば、赤ちゃんにとって必要な医療が提供できる病院を選んだり、療育するための物やサポートなどの育てる環境を整えたりするなど、生まれてくる赤ちゃんにとって最善の環境を準備しておくことができます。
また、身体的や経済的な理由などで育てていくことが困難な場合には、人工妊娠中絶を検討する方もいます。
羊水検査を受けるべきかはとても悩むと思います。ママ一人で悩むことはせず、パパと一緒に考え、必要なときには専門家に相談しながら自分たちにとって羊水検査を受けることは必要かどうか考えていきましょう。
先天異常は予防できる?
現在の医療では、染色体の異常や遺伝子による先天性の病気を予防することはできません。
ただ、先天異常の一つである「神経管閉鎖障害」は唯一予防することができる病気です。
神経管閉鎖障害とは、赤ちゃんが生きていくために必要な神経をつくっていく段階で障害が起き、神経管という脳やせき髄のもとになる組織がうまく閉じなかった状態をいいます。
どの段階で障害が起きてしまったかによって赤ちゃんの命や後遺症に影響を与え、最も重症な場合には脳が形成されず、生きていくことができない場合もあります。
神経管閉鎖障害については、こちらの記事で詳しく解説しています。
神経管閉鎖障害と葉酸にはどんな関係がある?赤ちゃんの先天異常をサプリメントで予防しよう【助産師執筆】
葉酸を摂取することで発症を予防することができるといわれている「神経管閉鎖障害」。神経管閉鎖障害とはどんな病気なのか、その原因や検査方法などを、葉酸との関係性を含めて詳しく解説します。赤ちゃんの先天異常を予防するために、妊活中にできることを今から始めていきましょう。
神経管閉鎖障害は、葉酸の摂取によって予防することができます。
とくにサプリメントに含まれている葉酸は「モノグルタミン酸型葉酸」といって、食べものに含まれる葉酸よりもカラダの中で吸収されやすいため、神経管閉鎖障害の予防のためには葉酸サプリメントを摂取することが勧められています。
なんと葉酸サプリメントを摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクを40~80%低くすることができるという研究結果もあるのです。(※3)
また、厚生労働省からも、妊娠初期にはサプリメントなどの栄養補助食品から葉酸を摂取することが推奨されています。
葉酸サプリメントには色々な種類がありますが、おすすめは妊娠中の栄養補給に特化したmamaru(ママル)です。
mamaruは、神経管閉鎖障害の予防に必要なモノグルタミン酸型葉酸を厚生労働省が推奨する400μg含み、葉酸の吸収率を高めるビタミンC、ビタミンB12も一緒に摂ることができます。
羊水検査を受けるかどうか悩んでいる方も、まずは予防できる病気を防ぐことから始めてみませんか?
さらにmamaruは、妊娠中に起こりやすい便通トラブルのサポートに最適な菌活成分を配合しており、ママの腸内環境をケアできることも特徴の一つです。
妊娠中の葉酸サプリの摂取は、先天異常を防ぐうえでとても大切なこと。mamaruで必要な葉酸をしっかりと補い、元気な赤ちゃんに会うための準備を始めましょう。
羊水検査ってどうやってやるの?
ここでは、羊水検査はどのように行うのかを解説していきます。
検査を受けることができる時期
羊水検査は受けることができる時期が限られています。
羊水量が十分に増えてきた妊娠15週から妊娠22週まで受けることが可能ですが、検査結果が出るまでの期間とその後の対応を考慮し、遅くても妊娠20週までに受けることが推奨されています。
羊水検査の方法と所要時間
実際の羊水検査の流れはこちら。
※病院によって細かい方法は変わってきます。
- 超音波(エコー)検査でお腹の中の赤ちゃんの位置、へその緒の位置、胎盤の位置などを確認する
- お腹を消毒し、清潔な状態をつくる
- ママのお腹に局所麻酔をする
- エコーでお腹の中の赤ちゃんの位置を確認しながら、細い注射針をママのお腹に刺して羊水を抜く
- お腹の中の赤ちゃんに異常がないか、羊水の量が極端に減り続けていないかをエコーで確認する
羊水をうまく抜くことができれば、お腹に針をさす時間は30秒程度で終わります。処置の前後ではお腹の中の赤ちゃんの様子をしっかりと確認する必要があるため、少し時間が必要となります。
多くの場合、検査自体は半日で終了します。
羊水検査の費用
羊水検査は保険適用外のため全額自己負担となり、一般的に10〜20万円ほどです。
羊水検査のリスクにはなにがある?
赤ちゃんのいるお腹に直接針を刺して、羊水を抜くことで検査をする羊水検査にはリスクがあります。
ここでは、羊水検査を受けることで生じるリスクについて解説していきます。
流産
羊水検査によってお腹の中の赤ちゃんが亡くなったり、流産となったりする可能性があります。
しかし、羊水検査による流産のリスクは0.12%で、流産リスクはほとんどないという研究結果もあります。(※4)
破水
羊水を抜くときには、赤ちゃんを包んでいる卵膜にも針を刺すことになります。
針の穴はとても小さいため、通常は卵膜が再生してその部分は閉じますが、穴が大きくなって羊水が漏れてしまったり、針を刺した刺激によってお腹が張って破水したりすることもあります。
子宮内感染
子宮の中は菌がいない状態ですが、お腹から子宮内に針を刺すことで菌が入ってしまい、感染症を引き起こすことがあります。
子宮内感染が起きた場合にはママとお腹の中の赤ちゃんが菌に侵された状態となり、治療が必要となることがあります。状態によっては子宮内感染が原因で流産となる場合もあります。
知っておきたい羊水検査のQ&A
羊水検査についてよくある質問をまとめました。
検査にはどのくらい時間がかかる?
羊水検査自体は半日程度で終わりますが、結果が出るまでには、一般的には2〜3週間かかります。
羊水検査では、採取した羊水中に含まれている赤ちゃん由来の細胞を培養して、染色体の本数や構造を調べます。細胞を培養するのに時間を要するため、結果が出るまでには時間がかかります。
なお、21番・13番・18番の常染色体の数に限定した迅速検査では最短1日で結果が出ますが、確定診断ではなくあくまでも参考程度の検査となります。
痛みはある?
痛みを感じない方がほとんどで、中には採血程度の痛みを感じる方もいます。
羊水検査で使用する針の太さは病院によっても変わりますが、20〜25G(ゲージ)の針を使用します。
通常の採血で使用する針は22〜23Gが多く、針の太さはそこまで変わりません。
20〜25Gの針を使って、お腹の皮膚から子宮の筋肉、卵膜を貫通して羊水を採取します。
針をさす前にはお腹に局所麻酔を行うことが多く、皮膚表面の痛みは感じないのですが、局所麻酔は子宮の筋肉までは到達しないので多少痛みを感じることはあります。
新型出生前診断(NIPT)との違いは?
新型出生前診断(NIPT)は妊娠中のママの血液を採取し、お腹の中の赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べることができる検査です。
羊水検査と比べると、ママにもお腹の中の赤ちゃんにもリスクが低い検査といえます。
ただ、新型出生前診断(NIPT)でわかる検査結果は「可能性」であり、確定診断をすることはできません。
一方、羊水検査は確定診断ができる検査という違いがあります。
羊水検査を受けるメリットとリスクのまとめ
今回の記事では、羊水検査を受けるべきか悩んでいる方に向けて、羊水検査の詳細や受けるリスクについて解説してきました。
羊水検査は、妊娠中にお腹の中の赤ちゃんの先天異常を確定診断することができる検査です。赤ちゃんの病気を事前に把握することで、育てていく家族と赤ちゃんにとって最適な環境を事前に準備することができます。
ただ、妊娠中のお腹に直接針を刺して羊水を抜くため、流産・破水・子宮内感染などママとお腹の中の赤ちゃんに影響を与える検査でもあります。検査の結果によっては、辛い思いや選択をしていく必要も出てきます。
羊水検査を受けるべきか悩んでいる方は、羊水検査について十分に理解した上で夫婦、必要に応じて専門家を交えて相談し、受けるかどうか選択していきましょう。
羊水検査でわかる先天性の病気は、現在の医学では予防することができません。
唯一予防することのできる先天性の病気「神経管閉鎖障害」は、葉酸をしっかりと摂取することで防ぐことが可能です。
葉酸を含む妊娠中に必要な栄養素をギュッと凝縮したサプリメントmamaruを活用して、赤ちゃんの成長サポートと妊娠中のカラダのケアをしていきましょう。
参考:
(※1)厚生労働省:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」14女性の年齢と子どもの染色体異常の頻度
(※2)日本小児神経学会:Q48:染色体異常は遺伝するのでしょうか。
(※3)Prevention of neural-tube defects with folic acid in China. N Engl J Med 1999
(※4)LJ Salomon, et al.:Risk of miscarriage following amniocentesis or chorionic villus sampling: systematic review of literature and updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019 Oct;54(4):442-451
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