更新日:2024/4/30
妊活中に風しんのワクチンって打った方がいい?〜赤ちゃんに影響する感染症【助産師執筆】
妊活中や妊娠中に気をつけたい感染症の一つに、風しんがあります。
特に妊娠20週までの間に妊婦さんが初めて風しんウイルスにかかると、「胎内感染」といっておなかのなかの赤ちゃんにも感染し、「先天性風しん症候群」という障害を持って生まれる可能性があります。
他にもお母さんがかかることで赤ちゃんに影響する感染症もあります。
今回は風しんウイルスによる母子への影響や妊活中に風しんワクチンを打った方がいいのか、風しんの他に赤ちゃんに影響する感染症はどんなものがあるのか解説していきます。
この記事に登場する専門家
助産師 四辻有希子
大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。
〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター
風しんってどんな病気?
妊娠中に風しんにかかるとよくないというのは、耳にしたことがあると思います。では、風しんとはいったいどのような病気なのか解説していきます。
風しんとは
風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。
風しんウイルスの感染力はとても強く、人から人へ飛沫感染(咳やくしゃみ)や接触感染(ウイルスに汚染されたものに触る)によってうつります。
感染から約2〜3週間の潜伏期間を経て発症します。
症状は、発熱、発疹、耳の後ろのリンパ節の腫れが主なものです。子どもは比較的軽症で済むことが多いですが、大人がかかると発熱が長引いたり、発疹がひどくなることもあります。
先天性風しん症候群とは
風しんに感染すると怖いのは妊婦さんです。
1度も風しんにかかったことのない妊婦さんが妊娠初期に感染すると、赤ちゃんが「先天性風しん症候群」という先天性の疾患を持って生まれてくる可能性があります。
先天性風しん症候群とは赤ちゃんが難聴・白内障や緑内障・心臓疾患・精神や体の発達の遅れなどを引き起こす病気です。
風しんにかかったからといって必ず先天性風しん症候群を引き起こすわけではありませんが、妊娠1ヶ月で風疹になった場合は50%以上、妊娠2ヶ月の場合は約35%とされています。
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風しんの抗体って?
風しんにかからないためには体の中に風しんに対する抗体があることが大切です。風しん抗体を得る方法は2種類あります。1つ目は実際に風しんにかかること、2つ目は風しんを含むワクチンの予防接種をすることです。
風しんの抗体があるか母子健康手帳で確認
風しんにかからないようにするにはワクチンの予防接種が有効ですが、日本では風疹の予防接種の規定が時代とともに変化してきました。
世代によっては接種率が低い世代もあります。
特に1990年4月より前に生まれている女性は、予防接種を打っていても1回しか打っていない世代です。
風疹ワクチンは2回打つことで効果を十分に発揮できるものなので、1回の接種の場合だと抗体価が低い可能性があります。
母子健康手帳を確認すると予防接種の記録がありますので、確認してみてください。
もし母子健康手帳に記録がない方や母子健康手帳がない方は風しん抗体検査を受けることをおすすめします。
予防接種を受けてから年数が経ってしまうと、風しんに対する免疫が低下する可能性もありますので、不安な方は風しん抗体検査を受けることをおすすめします。
風しん抗体検査
風しん抗体検査とは、体の中に風しんの抗体があるかをチェックすることができる検査です。
血液検査によって風しんの抗体があるかないかすぐに確認することができます。
妊娠を希望する女性に対しては無料で抗体検査を受けることができる自治体が増えてきています。
また、男性は妊娠しませんが、旦那さんが風しんにかかってしまうと、風しんウイルスは感染力の強いウイルスなので女性もかかってしまう可能性が高いです。
夫婦そろって風しんの抗体があるかどうかを把握しておくことが大切です。
風しんワクチンの予防接種
風しんは、風しんワクチンの予防接種を受けることで、95%以上の人に抗体ができるといわれています。
風しんの潜伏期間は2〜3週間なので、妊娠中に風しんの感染がわかったときにはもうどうしようもありません。
お腹の中の赤ちゃんが先天性疾患にかかるリスクを減らすためにも、妊娠を考えている方の予防接種は大切です。
風しんワクチンって女性だけが打てばいい?
風しんはとても感染力の強いウイルスです。
同居していて十分に抗体のない家族には、ほぼうつると思ってもいいほどです。
そのため、風しんの抗体が十分にない方で、今後妊娠を考えている夫婦は2人とも予防接種をすることがおすすめです。
女性が風しんワクチンを打つときの注意点は?
女性が風しんワクチンを打つときには、妊娠していないことが条件です。
風しんワクチンは生ワクチンといって、風しんウイルスの毒性を弱めたものを原材料として作られているので、ワクチンを打った後にはウイルスの成分が体の中を循環している可能性があります。
そのため以下の2点を遵守してください。
・妊娠を希望する女性が風しんワクチンを打つ場合には、必ず1ヶ月避妊した後に打つ。
・風しんワクチンを接種した女性は、接種後2ヶ月は避妊する。
男性が風しんワクチンを打つときの注意点は?
男性が風しんワクチンを打つ注意点は特にありません。
男性が風しんにかかることは多く、風しんの発症者の約8割は成人男性と言われているほどです。
風しんワクチンによる精子への影響はありませんので、妊娠を考えているパートナーの男性は、風しん抗体がない場合には積極的に風しんワクチンを打ちましょう。
風しんワクチンって妊娠中も打てるの?
風しんワクチンは生ワクチンなので、ワクチンを打つことで風しんウイルスを体に取り込んでしまい、ウイルスの成分が体の中で循環する可能性があります。
そのため、ワクチンの影響が赤ちゃんに出てしまう可能性があるので、妊娠中の女性は風しんワクチンを接種することはできません。
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母子感染する感染症
先天性風しん症候群の他にも、お母さんから赤ちゃんに感染する感染症があります。
不妊治療を始める方や妊娠初期の検査でも確認しているものがあります。
B型肝炎
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスが血液や体液を介して感染して起きる肝臓の病気のことです。
日本では100人に1~2名の割合でB型肝炎ウイルスを持っているといわれていて、妊娠中や出産の時に赤ちゃんに感染する可能性があります。
出生後の赤ちゃんにB型肝炎のワクチンを打つなどして対応しています。
C型肝炎
C型肝炎は、C型肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気のことです。
小児期は肝臓の線維化は進行しにくいので、赤ちゃんに感染しても多くは無症状です。
しかし将来、肝炎、肝硬変、肝がんになることもあります。
HIV
妊婦さんがHIVに感染している場合、胎盤や臍帯を通して赤ちゃんに感染したり、出産時に産道を通ることで血液や体液に曝露されることで赤ちゃんに感染します。
妊娠中からHIVへの適切な治療が必要となります。
トキソプラズマ症
成人の30%ほどが感染していると言われている寄生虫の一つであるトキソプラズマによる感染症です。
通常は無症状か軽い症状で済みますが、妊婦さんが初めて感染した場合にはお腹の中の赤ちゃんに感染し先天性トキソプラズマ症になる場合があります。
サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルスによる感染症です。
妊婦さんが妊娠初期に初めて感染した場合は、おなかの赤ちゃんに肝臓障害や難聴などの影響が出ることがあります。
GBS(B群溶血性レンサ球菌)
多くの人が保有している腸や腟などに存在する常在細菌の一種です。
通常は無症状であることが多いのですが、妊婦さんが感染していると、赤ちゃんが出産時に産道を通ることで感染してしまうことがあります。
性器クラミジア
性感染症で多いのが性器クラミジアです。
性器クラミジアに感染している妊婦さんが未治療のまま経膣分娩すると、赤ちゃんも感染して結膜炎や肺炎などを引き起こす可能性があります。
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)
HTLV-1とは血液中の白血球のひとつであるリンパ球に感染するウイルスです。
感染していてもほとんどの人は病気を発症することなく一生を過ごしますが、中には成人T細胞白血病といわれる血液の病気や、HTLV-1関連脊髄症といわれる神経の病気などを発症する場合があります。
妊活中から母子感染のリスクを減らすためには?
お母さんから赤ちゃんに感染する病気は数多くあります。
こうした感染のリスクを減らすためには、妊活中から気をつけておくことも大切です。
適切な感染対策
飛沫感染や接触感染などでうつる風しんの予防にはマスクの着用、手洗いうがいの徹底が基本です。
また、妊娠後に風しん抗体がないことが判明した場合には、妊娠20週まではできるだけ人混みを避ける方が安心です。
性交渉による感染症を防ぐためには、不特定多数の方との接触を避けたり、コンドームを使用しましょう。
感染症検査をする
まずは自分自身が感染症を保有していないかを確認することも大切です。
また、母子感染する病気は性交渉で感染するものも多いため、パートナーも検査を受けておくと安心です。
適切な治療を受ける
検査をしたあとには適切な治療を受けることが大切です。
母子感染する病気は性交渉で感染するものも多いため、夫婦のどちらかが治療するのでは意味がありません。
夫婦そろって適切な治療を受けるようにしましょう。
お腹の中にいる赤ちゃんに必要な栄養を届けるためには、ママが健康的でなければなりません。
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妊娠してから気づいたり、対策をするのでは遅いこともあります。妊娠を考えている妊活中からご自身の身体に目を向けて、身体作りをしていくことが大切です。
葉酸の摂取
予防することができる先天性の病気の中に、神経管閉鎖障害というものがあります。
神経管閉鎖障害は、赤ちゃんの脳、脊椎、脊髄に起きる先天異常のことです。
葉酸の摂取が不足すると、赤ちゃんが重大な先天性の病気になってしまう可能性がありますが、妊活中から十分な葉酸を摂取していれば予防することができます。
食事だけで葉酸を十分な量を摂取しようとすると、なかなか難しいこともあります。
手軽に葉酸を摂取するにはサプリメントがおすすめです。妊活中の方に特化したmitasは葉酸はもちろん、そのほかにも妊活中の女性にとって必要な栄養素をギュっと詰め込んでいます。
ぜひ妊活中からご自身にとっても赤ちゃんにとってもよりよい身体づくりをしていきましょう!
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まとめ
今回は風しんを中心に母子感染によって赤ちゃんに影響が出る可能性のある感染症について解説しました。
「先天性風しん症候群」はかかってしまうと赤ちゃんにとって将来が左右されてしまう病気です。
予防するためには風しん抗体のない方のワクチンを打つことが大切です。
気をつければ予防できる病気なので、妊娠を考えている方はまずは風しんの抗体があるかを調べましょう。
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