更新日:2024/11/21
出生前診断を受けるメリットとデメリットを助産師が徹底解説!検査の種類やわかる病気も
出生前診断は、妊娠中にお腹の中の赤ちゃんに病気がないかを調べることができる検査です。
最近ではママとお腹の中の赤ちゃんにとってリスクが低い検査もあり、受けるか悩んでいる方も多くなってきています。出生前診断にはメリットもあればデメリットもあるので、よく考えて受けることが大切です。
今回の記事では、出生前診断を受けるメリットとデメリットについて、検査の種類やわかる病気も含めて助産師が徹底解説していきます。
◉この記事でわかること
・出生前診断を受けるメリット
・出生前診断を受けるデメリット
・出生前診断とは?検査の対象となる人、受けるか受けないか決める方法
・出生前診断の種類とわかること
・検査の結果が出たあとにはどうするか
この記事に登場する専門家
助産師 四辻有希子
大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。
〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター
出生前診断を受けるメリット
出生前診断を受けるメリットは、妊娠中から生まれてくる赤ちゃんにとって必要な環境を事前に整えておくことができることです。
赤ちゃんを育てることはとても大変なことです。赤ちゃんに特別なお世話が必要な場合は、育児の負担はさらに大きくなります。
出産前から準備をしておくことで、ママとパパにとっても赤ちゃんにとっても、最適な環境で育児をスタートすることができます。
まずは、出生前診断を受けるメリットについて詳しく紹介していきます。
赤ちゃんの状態を把握することで安心できる
お腹の中の赤ちゃんの様子は、ママたちが目で確認できるものではありません。
特に高齢妊娠や、先天性の異常のあるお子さんを出産した経験があるなど、お腹の中の赤ちゃんに異常があるリスクの高い方は心配だと思います。
出生前診断でお腹の中の赤ちゃんの状態を把握することで、次のようなママたちの安心につながることも多いです。
- 高齢妊娠はリスクが高いと聞いて心配になり受けたが、結果が問題なくて安心した
- 事前にわかることで気持ちの整理ができた
- トリソミーで死産した経験があったが、検査を受けて死産への不安が軽減できた
必要な医療環境の準備ができる
お腹の中の赤ちゃんに先天性の異常があった場合には、出生直後から専門的な医療が必要となるケースもあります。
事前にお腹の中の赤ちゃんの状態を知っておくことで、出産後に必要な医療をすぐに提供できる病院を選んでおけるため安心して出産することができます。
療育環境の準備ができる
お腹の中の赤ちゃんに病気や障害があった場合、赤ちゃんを育てていくための環境を事前に準備しておくことができます。
赤ちゃんを育てていくための準備は育児していく場所や育児用品、医療だけでなく、育てていくママとパパの病気に対する知識や心の準備、経済的な準備も大切です。
出生前診断を受けるデメリット
出生前診断にはメリットだけでなくデメリットもあります。
母児ともにリスクがある検査もある
出生前診断はママとお腹の中の赤ちゃんにとってリスクが低い検査もあれば、リスクが高い検査もあります。
検査の種類について詳しくはこちらで確認できます。
特に染色体異常がないかを調べる確定検査である「羊水検査」と「絨毛検査」は、流産や破水、検査によって感染が引き起こされるリスクもあり、ママとお腹の中の赤ちゃんに影響が出る可能性もあります。
確定的検査の一つである「羊水検査」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【羊水検査を受けるべきか悩んでいる方へ】検査の詳細や受けるメリット・リスクを助産師が解説
羊水検査を受けるべきか悩んでいる方必見!羊水検査は、赤ちゃん由来の細胞から染色体異常があるかどうかを調べることができる検査です。誰でも受けることができる検査ではなく、胎児に染色体異常がある可能性が高い妊婦さんが対象となります。この記事では検査の詳細やリスクを解説し、羊水検査を受けるか悩んでいる方が知りたい情報をまとめています。
ママとお腹の中の赤ちゃんにリスクがある検査を受けることが必要になるケースもあるので、出生前診断を受けるにはしっかりと考えることが大切です。
決め難い決断をしなければならない可能性がある
検査の結果によっては、ママやパパが混乱してしまう可能性もあります。
どんな赤ちゃんでも受け止める覚悟があったとしても、妊娠中に知ったことで辛い思いをすることもあります。
また、状況によっては妊娠を継続するか決断しなければならない可能性もあります。
検査を受けないことを選択した方の声では、検査を受けることで悩みが大きくなり、後悔しそうという声が多くありました。
- 出生前検査を受けて異常があったら悩むし、受けたことを後悔すると思ったから受けなかった
- 病気や異常が見つかって産むか産まないかの選択をするのは無理だと思った
- メリットとデメリットを比較して自分には検査するデメリットの方が大きいと感じた
すべての病気や障害がわかるわけではない
検査の種類によってわかる病気や障害は変わってきますが、どの出生前診断でもすべての病気や障害がわかるわけではありません。
赤ちゃんに先天性の病気がある割合はおよそ3~5%といわれていて、そのうち染色体の異常がある赤ちゃんは25%ほどです。(※1)(※2)
出産後、こどもの成長とともにわかる病気や障害もたくさんあります。
リスクのある出生前診断を行ったとしても、わかる病気や障害は限られているのです。
出生前診断の基礎知識をおさらい
そもそも出生前診断とはどんな検査なのか、出生前診断の基礎知識をおさらいしていきます。
出生前診断とは
出生前診断は、妊娠中にお腹の中の赤ちゃんの先天性の病気や障害を知ることができる検査です。
超音波を用いてお腹の中の赤ちゃんの形態的な異常がないか把握する「胎児超音波スクリーニング検査」や、染色体や遺伝子に異常がないか把握する検査があります。
出生前診断で行う検査の種類についてはこちらで確認できます。
検査の対象となる人
染色体や遺伝子に異常がないかの確定診断をするための検査である「羊水検査」と「絨毛検査」は、対象者が限定されています。
絨毛検査の対象者は、超音波検査で明らかな異常を指摘されている方のみとしている病院がほとんどです。
羊水検査の対象者は、高齢妊娠の方、NIPTが陽性だった方、夫婦のどちらかか両方が染色体異常を保因している方、染色体異常の子どもの出産経験のある方となります。
受けるか受けないかはどうやって決める?
出生前診断は誰もが受ける必要のある検査ではありません。
お腹の中の赤ちゃんが先天性の病気や障害を持って生まれてくるリスクの高い方には、病院から出生前診断の情報提供があることもありますが、受けなければいけないわけではありません。
それぞれの検査の内容、その検査からどんなことがわかるのかをしっかりと夫婦ともに知った上で、自分たちにとって検査を受ける必要があるのかを話し合うことが大切です。
検査を受けた後には必ず結果が出ます。その結果によって、どのように対応していきたいかを事前に話し合っておくことも大切です。
検査を受けるか悩んでいる場合には、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーに相談してみるのもおすすめです。
「なんとなく心配だからとりあえず受けよう」という気持ちで検査を受けてしまうと、結果が出たときにどうしたらいいのかわからず困ってなにも考えられなくなることも多いです。
出生前診断を受けるか受けないかは、検査について十分に調べた上で夫婦で相談して決めましょう。
赤ちゃんの障害が不安な方に向けて、後悔しないために妊娠中にできることを解説した記事もあわせてご覧ください。
赤ちゃんの障害が不安…後悔しないために妊娠中にできること
妊娠中に付いて回る心配といえば”赤ちゃんの障害”ですが、産後に後悔しないために今からできることはあるのでしょうか?この記事では、障害の原因や妊娠中におこなえる検査について紹介します。赤ちゃんの障害の中には、ママが十分に栄養を摂取することで防げる疾患もあります。妊娠中の”今”おこなえることをすぐに始めましょう。
出生前診断の種類とわかること
出生前診断には、お腹の中の赤ちゃんの形態的な異常を知るための検査と、染色体や遺伝子の変化を見る遺伝学的検査があります。
形態的な異常を知るための検査
お腹の中の赤ちゃんに形態的(カラダのつくりや臓器など)な異常がないか確認するために、超音波の機械を用いて画像を見て診断する検査を「胎児超音波スクリーニング検査」といいます。
妊婦健診で行う超音波検査とは異なり、胎児超音波スクリーニング検査は専門のトレーニングを受けた医師や検査技師が長時間かけて行います。
胎児超音波スクリーニング検査についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
胎児スクリーニングとは?出生前診断でわかる先天性の病気と検査について解説【助産師執筆】
「お腹の赤ちゃんに病気や障害があったらどうしよう」と不安に思い、「胎児スクリーニングとはなに?」「胎児ドックや出生前診断を受けるかどうか迷っている」という方も多いと思います。この記事では、胎児スクリーニング検査を含む出生前診断にはどんな検査があるのか、どんなことがわかるのか、出生前診断でわかる先天性の病気について解説していきます。
染色体や遺伝子の異常を知るための検査
染色体や遺伝子の変化を見る遺伝学的検査には、確定的検査を受けるかどうかを判断するための検査である「非確定的検査」と診断を確定するための検査である「確定的検査」の2種類があります。
非確定的検査
「非確定的検査」は確定的検査を受けるかどうかを判断するための検査です。
非確定的検査はママの採血や超音波検査など、確定的検査と比べるとママや赤ちゃんへのリスクが低い検査です。
検査の種類 | 新型出生前診断(NIPT) | コンバインド検査 | 母体血清マーカー検査 |
---|---|---|---|
検査ができる週数 | 妊娠9週〜18週頃 | 妊娠11週0日〜13週6日 | 妊娠15〜18週頃 |
調べる病気 | 21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミー | 21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミー | 21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、開放性神経管奇形(神経管閉鎖障害) |
検査方法 | 採血 | 採血と超音波検査 | 採血 |
感度 | 99% | 85%前後 | 70〜80% |
結果が通知されるまでの期間 | 1〜2週間 | 2週間 | 2週間 |
費用 | 10〜20万円 | 5000〜5万円 | 2〜3万円 |
非確定的検査はあくまでも確定検査を受けるかを判断するための検査なので、確定診断はできません。検査の結果で「陽性」と出た場合には、リスクが高い確定的検査を受けるか判断していく必要があります。
確定的検査
確定的検査は、お腹の中の赤ちゃんに先天性の病気や障害がある可能性が高い場合に行われる検査です。
流産、破水、感染などのリスクが伴う検査です。
検査を受けることで診断が確定します。
検査の種類 | 絨毛検査 | 羊水検査 |
---|---|---|
調べる病気 | 染色体異常全般 | 染色体異常全般 |
検査方法 | 絨毛を採取 | 羊水を採取 |
感度 | 100% | 100% |
結果が通知されるまでの期間 | 2〜3週間 | 2〜3週間 |
費用 | 10〜20万円 | 10〜20万円 |
赤ちゃんの先天異常予防のためにできることはある?
お腹の中の赤ちゃんが生まれつき持っている病気や異常を予防することは、現在の医療では困難です。
しかし、「神経管閉鎖障害」だけは予防することができる先天異常です。
神経管とは、赤ちゃんの脳や脊髄、神経など重要な臓器のもととなるもの。本来閉じるはずの神経管がうまく閉じずに開放された状態になってしまうと、無脳症など赤ちゃんの命に関わる病気になったり、後遺症が残る可能性のある二分脊椎などの病気になったりしてしまいます。
先天異常の一つである神経管閉鎖障害は、ママが妊活中〜妊娠中に葉酸サプリメントを飲むことで予防できる病気です。
厚生労働省も神経管閉鎖障害の予防のために、特に妊活中や妊娠初期の女性は食事から摂取する葉酸250μgに加えて、サプリメントなどの栄養補助食品から400μgの葉酸の摂取を推奨しています。
サプリメントに含まれる葉酸は「モノグルタミン酸型葉酸」といって、食品に含まれる葉酸よりもカラダの中で吸収されやすい成分です。
妊娠中の女性は葉酸の需要が高まるため、食品に含まれる葉酸ではカバーすることが難しく、葉酸サプリメントの摂取が推奨されています。
神経管閉鎖障害と葉酸の関係性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
神経管閉鎖障害と葉酸にはどんな関係がある?赤ちゃんの先天異常をサプリメントで予防しよう【助産師執筆】
葉酸を摂取することで発症を予防することができるといわれている「神経管閉鎖障害」。神経管閉鎖障害とはどんな病気なのか、その原因や検査方法などを、葉酸との関係性を含めて詳しく解説します。赤ちゃんの先天異常を予防するために、妊活中にできることを今から始めていきましょう。
妊娠中のママと赤ちゃんにおすすめの葉酸サプリメントはmamaru
たくさん種類のある葉酸サプリメントを選ぶポイントは、葉酸の含有量が推奨量をクリアしているかをしっかりとチェックすること。
妊娠初期に必要なサプリメントから摂取する葉酸の量は400μgです。
また、葉酸以外にも妊娠中に必要な栄養素が含まれていることもチェックしたいポイントです。特にビタミンC、ビタミンB6、ビタミンB12が含まれていると葉酸の吸収率が高まるのでおすすめです。
妊娠中の栄養補給に特化したサプリメントmamaru(ママル)には、神経管閉鎖障害予防のために摂りたいこれらの栄養素がしっかり詰まっています。
葉酸400μgと吸収力を高める成分をたっぷりと配合。
さらに、赤ちゃんの脳の発達をサポートするDHA/EPA、流産の予防として注目されているビタミンDや乳酸菌、ラクトフェリンも配合しています。
赤ちゃんの先天性異常である神経管閉鎖障害を予防しながら、体の発達サポートにもうれしい栄養がつまったmamaruで、赤ちゃんの健やかな成長を応援しましょう。
検査の結果が出たらどうする?
検査結果は100%ではありませんが、結果で問題が指摘されなかった場合には今まで通り生活していて大丈夫です。
非確定的検査を受けて陽性だった場合には、確定的検査を受けるかどうか考えていく必要があります。
確定的検査を受けるか迷っているときには、遺伝カウンセリングや専門の医療機関を受診して相談していくこともいいですね。
また、確定的検査で陽性となった場合には、赤ちゃんが生まれたあと検査や治療に対応できる病院を選んだり、病気や障害を持つ家族の集まり(自助グループ)に参加して情報を集めたりするのもおすすめです。
まとめ
今回は出生前診断を受けるメリットとデメリットについて、検査の種類やわかる病気も含めて解説してきました。
出生前診断には、お腹の中の赤ちゃんの形態的な異常を調べるための「胎児超音波スクリーニング検査」、染色体や遺伝子の異常を調べるための遺伝学的検査があります。
遺伝学的検査には診断を決定する「確定的検査」と、リスクの高い確定的検査をするか判断するために行う「非確定的検査」があります。
出生前診断を受けることで、お腹の中の赤ちゃんの状態がわかり、特別な対応が必要な赤ちゃんの場合には事前に準備することができます。
しかし、出生前診断を受けてもわからない病気もあり、検査を受けることで辛い思いをする可能性もあります。
出生前診断は検査の特徴をしっかりと把握した上で、自分たちにとって必要かを夫婦で相談して受けることを決めていくことが大切です。
赤ちゃんの神経管閉鎖障害は、唯一予防できる先天性異常。葉酸サプリメントを摂取することで予防が可能です。
妊娠中に必要な栄養がつまったmamaruは、神経管閉鎖障害を予防するために推奨されるモノグルタミン酸型葉酸がしっかり400μg配合されたサプリメントです。
赤ちゃんの健やかな成長のために、妊娠中に不足しがちな栄養はぜひmamaruで補っていきましょう。
参考文献:
(※1)Nussbaum R, et al.: Thompson & Thompson Genetics in Medicine, 8th Edition, Elsevier, 2015
(※2)Wellesley D, et al.: J Hum Genet 2012; 20: 521-526
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