更新日:2024/6/20
妊婦体重増加の目安は?理想的な増え方とコントロールのコツを助産師が紹介!
安定期に入ってちょっと心の余裕ができたのも束の間、「最近体重が増えぎみかも…。どのくらいなら増えても大丈夫?」「増えすぎるとリスクはある?」と妊娠中の体重増加について疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?
「しっかり食べて体重を増やさないと!」や「増やしすぎると良くないよ」など、妊娠中の体重増加について色々な意見を聞いたことがあると思います。
本記事では、妊娠中の体重増加について深掘りしていきます。妊娠中の体重増加の目安や、増えすぎや増えなさすぎによるお母さんやお腹の中の赤ちゃんへの影響、そして体重のコントロールのコツについても解説していきます。
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この記事に登場する専門家
助産師ライター かなえ
現役助産師ライター。
助産師免許取得後、助産師外来や院内助産を経験し、現在はフリースタイル出産を取り扱うクリニックで勤務。また、地域の学校や親子向けに性教育のおはなし会を開催。
【資格】
・看護師
・助産師
・保健師
・新生児蘇生法インストラクター
妊婦の体重増加の目安ってどれくらい?
たくさんの妊婦さんの悩みのタネである、体重増加。
妊娠することにより、つわりや食べ物の好みの変化、浮腫みやすさの変化、便通の変化など、体重に影響することは多岐に渡ります。
つわりが長く続く方は、食事量が十分に取れず、体重があまり増えないことが悩みのタネ。反対に、妊娠して食欲や食事量が増えた方は、体重が増えすぎることが悩みのタネとなります。また、中には体重を気にしすぎて食事制限をしているなんていう方も。
そこで、知っておきたいのは、妊婦さんの体重増加の目安は「元の体格によって異なる」ということです。
自分の体重増加の目安を知ろう
自分の体重増加量の目安を知るためには、まず自分自身の妊娠していない時の体格を知る必要があります。
自分の体格を知るためには「BMI」という指数を使用します。BMIとはBody Mass Indexの略で、身長と体重を用いて計算することができる「体格指数」のこと。
この指数は、世界共通の指数として国際的に用いられています。以下の計算式に自分の体重と身長を当てはめて、BMIを出してみましょう。
【BMIの計算式】
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMIによる体重増加の目安は以下の通りです。
BMI | 体重増加の目安 |
---|---|
BMI<18.5(やせ) | 12〜15kg |
18.5≦BMI<25(普通) | 10〜13kg |
25≦BMI<30(肥満1度) | 7〜10kg |
BMI≧30(肥満2度以上) | 個別対応(上限5kgまで) |
健康的な体重増加とは?
上記のように、妊娠前の体格により体重増加の目安が異なります。しかし、妊婦さんとお腹の中の赤ちゃんにとって大切なのは、体重の増加量という目に見える数字だけではありません。
体格に合った体重増加をしていても、ひどく浮腫んでる状態や、食生活が乱れていてひどい便秘に悩まされている状態では健康的だとは言えません。
反対に、体重増加量は少し多くても、生活のリズムが整い、むくみや便秘知らずで元気に過ごすことができている状態だと、健康的な体重増加であると捉えることができます。
また、目安となる体重増加量が定められてはいますが、実ははっきりとした根拠は示されていない状態でもあります。そのため、妊娠中の体重管理や食事指導などは厳しいものではなく、個人に合わせて緩やかにしていくことが良いと考えられているというのが現状です。
妊娠中の体重増加の必要性
妊娠中の適切な体重増加は、お母さんにとっても赤ちゃんにとっても大切なこと。
妊娠することにより、お腹の赤ちゃんが成長するだけでなく、お母さんの体にも様々な変化が現れます。
妊娠すると、赤ちゃんに血液を送るため体の中を巡る血液量が増えます。そして、胸や子宮が増大し、皮下脂肪が蓄えられます。ここに赤ちゃんの成長や胎盤、羊水の重さが加わります。これら全てを足したものが、妊娠中の体重増加となります。
これらの体重増加は、お腹の中の赤ちゃんの成長はもちろん、長時間に渡るお産を乗り越えるためのエネルギーや、お産のときの出血に耐えるための備えの役割、そして産後の赤ちゃんとの生活のための蓄えとなります。そのため、お母さんの元々の体格により望ましい体重増加量が異なるのです。
2021年に目安体重の基準が変わったワケ
実は、上記の体重増加量の目安は2021年に改正された内容です。
この改正により、体重増加の目安は、下限と上限の幅が広がり、目安の基準値が増加しました。同時に、妊娠する前からの体づくりの大切さも謳われるようになりました。
妊娠前の体格区分 | 妊娠前のBMI | 以前の体重増加の目安 | 新しい体重増加の目安 |
---|---|---|---|
低体重(やせ) | BMI<18.5 | 9~12㎏ | 12~15kg |
ふつう | 18.5≦BMI<25 | 7~12㎏ | 10~13kg |
肥満(1度) | 25≦BMI<30 | 個別対応 | 7〜10kg |
肥満(2度) | BMI≧30 | 個別対応 | 上限5kgまで |
この指針は「妊産婦のための食生活指針」というもので、もともと2006年に策定されていました。それから15年が経過し、妊産婦さんを取り巻く健康や栄養・食生活などを始めとした社会状況が変化していることから、内容が見直されました。
これは、日本において痩せ型の妊婦さんが増えているという現状と、それがお腹の赤ちゃんとその後の発育に関係するということが研究により分かってきたということが背景にあります。
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体重増加が多すぎるOR少なすぎるとどうなるの?
妊娠中の体重増加が多すぎる場合と少なすぎる場合のリスクについて解説していきます。どちらもお母さんとお腹の中の赤ちゃんの両方に影響する可能性があると考えられています。
太りすぎることによるリスク
ここでは、妊娠中の体重増加が多すぎる場合と、妊娠前の体格が「肥満」に該当する妊婦さんに起こるリスクが高くなることを解説していきます。
母体への影響
妊娠高血圧症候群
妊娠に伴って高血圧を発症すること。妊娠前もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合は「高血圧合併妊娠」といいます。
また、高血圧と蛋白尿を認める場合は「高血圧腎症」といいます。その他、蛋白尿が認められなくても、肝機能、腎機能、神経に障害がみられた場合やお腹の中の赤ちゃんの発育が悪くなった場合も高血圧腎症に分類されます。
妊娠高血圧症候群が重症化すると、様々な合併症が起こり、お母さんとお腹の中の赤ちゃん両方のいのちに関わることもあります。
【重篤な合併症】
脳:痙攣発作、脳出血
肺:肺水腫
肝:肝機能障害、HELLP症候群
腎:腎機能障害
胎児:常位胎盤早期剥離、胎児発育不全、胎児機能不全など
妊娠糖尿病
妊娠に伴って糖尿病を発症すること。妊娠糖尿病になり、お母さんの血糖値が高い状態になると、お腹の中の赤ちゃんの血糖値も高くなります。
【合併症】
お母さん:妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症、腎症およびそれらの悪化
赤ちゃん:流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など
帝王切開
上記の症状により母子の健康状態を優先するために、帝王切開を選択することがあります。
胎児への影響
巨大児
巨大児とは、出生体重が4000g以上の赤ちゃんのことをいいます。
多くの場合は、お腹の中にいるときに血糖値が高い状態だったことによって起こります。そのため、主な原因はお母さんの血糖値が高い状態にあったことや、糖尿病です。
赤ちゃんが大きいために経膣分娩が難しいこともあり、お産の進行が止まり医療介入が必要になったり、帝王切開となることも多くあります。
【合併症】
分娩外傷、肩甲難産、低血糖、高ビリルビン血症など
また、お母さんの体の循環が悪い場合、お母さんの元の体格や体重増加の割りに赤ちゃんが小さいというケースも見受けられます。
つまり、体の循環が悪く健康的な体重増加でない場合、赤ちゃんに必要な栄養が十分に送られていないということも考えられるのです。
体重の増加が少なすぎることによるリスク
ここでは、妊娠中の体重増加が少なすぎる場合と、妊娠前の体格が「やせ」に該当する妊婦さんに起こるリスクが高くなることを解説していきます。
以前は「小さく産んで、大きく育てる」という言葉もありましたが、現在では妊婦さんの体重増加が少なすぎることが色々なリスクに繋がることが明らかになっています。
母体への影響
切迫早産/早産
妊娠22週〜36週6日までの出産を早産といいます。そして、出血やお腹の張りなどの早産の兆候がある状態を切迫早産といいます。
妊娠34週より早く生まれてきた赤ちゃんは、まだ自分で呼吸ができないため、呼吸の補助や点滴による治療が必要です。NICUという赤ちゃんのための集中治療が可能な施設での管理が必要になります。
また、34週以降の赤ちゃんであっても、多くの場合は外の環境に適応できるようになるまでNICUでの管理が必要になります。
貧血
妊娠すると、体の中を循環する血液量が増え、血液が薄まるため、貧血になりやすい状態になります。やせ型の妊婦さんや体重増加が少なすぎる妊婦さんは、更にリスクが高まります。
貧血になると疲れやすくなったり、動悸が起こりやすくなります。また、貧血は産後うつのリスクを高めることも知られています。
微弱陣痛
微弱陣痛とは、お産を進める要素である陣痛が弱かったり、間隔が長かったりする状態のことです。
お産が進むためには、適度な陣痛が必要です。そのため、微弱陣痛が続くとお産が延びたり、陣痛促進剤や吸引などの医療介入が必要になることが多くあります。
産後の回復
お母さんの体力がないと、産後の回復に時間を要す可能性があります。その結果として、赤ちゃんのお世話にすぐに取りかかれないということも影響として挙げられます。
胎児への影響
胎児発育不全
お腹の中の赤ちゃんの推定体重が、妊娠週数と比較して平均より一定以上小さい(平均より1.5標準偏差以下)ことをいいます。
原因は多岐に渡り、ウイルス感染や凝固異常、胎児奇形など原因が分かるものもありますが、多くの場合はっきりとした原因が分かっていません。
低出生体重児
低出生体重児とは、2500g未満で生まれた赤ちゃんのことをいいます。低出生体重児は、呼吸やおっぱいを飲むことがすぐにできないこともあり、医療的なケアが必要となる場合があります。
また、発育・発達、学習など育児上の不安を抱えやすい傾向にあると言われています。
生活習慣病
近年日本で問題視されているのが、小さく生まれた赤ちゃんと生活習慣病の発症の関係です。
生まれた時の体重が低下すると共に、生活習慣病の発症リスクが高くなるということが明らかになっています。これは、妊娠中期に低栄養状態にさらされることが大きく関係していると考えられています。
「巡りの良いからだづくり」が体重コントロールのカギ
体重増加が多すぎても、少なすぎても色々なリスクがあるということが分かりましたね。
特に妊娠中は、体重の数字も気になると思います。しかし、それ以上にむくみや便秘がなく、元気に活動することができる「巡りの良いからだづくり」に目を向けることが大切です。
バランスの良い食事を摂る
食事は規則正しく、色々な食材から必要な栄養素を摂ることが大切です。カラフルで彩りの良い料理を目指すように心がけると良いでしょう。
また、妊娠中に起こりやすい便秘予防も意識したいところ。よく噛むことや、こまめな水分摂取、発酵食品や食物繊維、オリゴ糖の摂取も意識しましょう。
【食事のポイント】
- 主食を中心にエネルギーをしっかり摂る
- 副菜でビタミンやミネラルをたっぷり摂る
- 主菜を組み合わせてたんぱく質を十分に摂る
- 乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に摂る
- 発酵食品、食物繊維、オリゴ糖で腸内環境を整える
- しっかりと噛んで消化吸収や排泄機能を高める
- 水分摂取はこまめに冷たすぎないものを摂る
適度に体を動かす
全身に血液を巡らせるために、適度な運動は大切です。私たちの足は「第二の心臓」とも呼ばれ、心臓と共に血液を全身に巡らせるために重要な働きをしています。
妊娠していても医師からの指示がない限り、安静にする必要はありません。意識して歩いたり、ヨガやピラティス、水泳などの運動をしたりすることもおすすめです。
普段運動をする習慣がない方は、翌日に疲れを持ち越さない程度の運動から取り入れると良いでしょう。
質の良い睡眠を意識する
睡眠は私たちの健康を維持するためになくてはならないものです。細胞の修復や記憶の整理を始めとする色々な役割を担っています。
そして、睡眠不足が続くと、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増えて空腹ホルモンが分泌され、その結果として血糖値や血圧が上昇してしまいます。寝る時間が近づいたら、部屋の明かりを暗くしたり、スマートフォンなどのブルーライトを浴びないように心がけたりしましょう。
また、お腹が大きくなって寝苦しくなってきたら、クッションなどを利用してみるのも良いでしょう。
冷えは大敵
「冷えは万病のもと」という言葉がありますが、体の冷えは様々なマイナートラブルを引き起こすと言っても過言ではありません。体が冷えると血液の循環が悪くなってしまい、その結果として便秘やむくみが起こったり、消化吸収が悪くなったりしてしまいます。
簡単に取り入れることができる冷え予防は、毎日湯船につかること。また、第二の心臓である足は冷やさないようにしましょう。締め付けの少ないレッグウォーマーなどを利用するのもおすすめです。
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健康的な体重増加の手助けになるのがサプリメント!
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適切な体重増加を目指して健やかな妊娠生活を
妊娠中は、お母さんとお腹の中の赤ちゃんのために、適度な体重増加を心がけることが必要です。体重の増え方が多すぎても、少なすぎても色々なリスクに繋がるため、自分の体格に合った体重増加を目指しましょう。
また、健康的なマタニティライフを送るためには、生活習慣を整えて巡りの良い体づくりを目指しましょう。
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