更新日:2024/7/19

妊婦の正常な血糖値はどれくらい?妊娠糖尿病のリスクについて詳しく解説【助産師執筆】

妊娠糖尿病のリスクについて詳しく解説
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妊婦健診の採血で必ずチェックする血糖値。お医者さんから「血糖値が高い」と指摘を受けた方もいると思います。

妊娠中はカラダの中でさまざまな変化が起きることで、これまでは問題なかった糖質の代謝がうまくできなくなってしまうことも。その結果、血糖値が高くなってしまい「妊娠糖尿病」と診断される方もいます。

今回の記事では妊婦の正常な血糖値から、妊娠糖尿病とはどんな病気なのか、どのようなリスクがあるのか、血糖値が高めだと言われたときに気をつけたいポイントまで詳しく解説していきます。

◉この記事でわかること
・妊婦の血糖値の正常値
・血糖値とはなにか
・なぜ妊娠中に血糖値が高くなるのか
・血糖値が高いことによるお母さんと赤ちゃんへの影響
・妊娠糖尿病とはどんな病気なのか
・血糖値が高めだと言われたときに気をつけること

この記事に登場する専門家

助産師 四辻有希子

大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。
不妊治療から妊婦健診、出産、産後の母乳育児外来まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。

〈資格〉
・助産師、保健師、看護師
・ICLS認定インストラクター
・新生児蘇生法「専門」コース修了
・J-CIMELSインストラクター

妊婦の血糖値の正常値は?

妊婦健診の採血結果で「血糖値が高い」と言われた方は、特に妊婦の血糖値の正常値について気になりますよね。

血糖値は食べ物を摂取すると上昇していき、時間が経過するにつれて低下していきます。そのため血糖値の正常値は、空腹時とそうでないときによっても変わってきます。

日本糖尿病学会では、正常な血糖値の範囲を70~140mg/dlとしており、さらに空腹時は99mg/dl以下が理想とされています。

くの病院が妊娠初期の採血検査で病院ごとの基準を決め、妊娠糖尿病の可能性のある方をスクリーニングして追加の検査が必要かどうかを判断しています。

妊娠糖尿病の検査方法についてはこちらをご覧ください。

そもそも血糖値ってなに?

私たち人間は、食べ物を摂取してカラダの中で消化を行うことで栄養を得ています。食べ物の成分の中でエネルギー源となるものは3大栄養素といわれ、炭水化物・脂質・タンパク質があります。

中でも、炭水化物を多く含むごはん、パン、麺類などの主食は、摂取することで消化管で消化され、腸の中でブドウ糖となります。その後、小腸から吸収されて血液の中へと入っていき、エネルギーとしてカラダの隅々へと届けられます。この血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを「血糖値」と呼んでいます。

常、血糖値が上昇すると膵臓が働き、血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込ませる作用を持つ「インスリン」が分泌されるようになります。

そうすることで食後の血糖値がカラダの中で上昇し続けることを抑え、血糖値を適度な範囲でコントロールしているのです。

なんで妊娠中に血糖値が高くなるの?

お腹の中の赤ちゃんが成長するためには、エネルギー源となる糖質が必要です。

妊娠中には、お腹の中の赤ちゃんに糖質を送るために胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモンが分泌され、お母さんのカラダの血糖値をできるだけ下げないように作用します。

そのため妊婦さんのカラダはインスリンが効きにくく、ブドウ糖が筋肉や脂肪に取り込まれずに血液中に残った状態となり、血糖値が高くなりやすい傾向にあります。

血糖値が高いと赤ちゃんやカラダにどんな影響があるの?

1番気になるのは、血糖値が高いことで妊娠中のお母さんのカラダや赤ちゃんにはどんな影響があるのかということですよね。

ここでは時期別のお母さんのカラダへの影響と、赤ちゃんへの影響について解説していきます。

お母さんへの影響

血糖値が高いと、妊娠中、出産中、産後にわたって母体にさまざまな影響を与えます。

妊娠中

血糖値が高い状態が続くと以下のような影響があります。

①先天奇形

HbA1cの値が高いと先天異常になるリスクが上昇するといわれています。先天異常のリスクは妊娠7週までのHbA1cに左右されるため、妊娠前からの血糖コントロールが大切です。

もともと糖尿病がある方は、血糖コントロールと妊娠について主治医に相談しましょう。

参考:日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024

②流産、早産、羊水過多症

お腹の中の赤ちゃんが高血糖の状態が続くと、尿量が増えて羊水の量が必要以上に増えてしまうことがあります。これを「羊水過多症」といいます。

羊水過多になると通常よりも子宮の中が大きくなることでお腹が張りやすい状態となり、破水や早産のリスクが高まります

羊水過多症の方が破水すると臍帯が赤ちゃんより先に外に出てしまう「臍帯脱出」が起こりやすくなったり、子宮の内圧が一気になくなることで胎盤が剥がれる「常位胎盤早期剥離」が起こりやすくなったりと、お母さんと赤ちゃんの命に関わることもあります。

③妊娠高血圧腎症の合併

妊娠高血圧腎症とは妊娠前までは問題なかったにも関わらず、妊娠してから血圧が上昇したり腎臓の機能が低下してしまったりする病気です。

高齢の方や肥満の方、生活習慣が乱れている方(高カロリー食の摂取、運動不足)もかかりやすい病気です。

妊娠高血圧腎症になると、さら​​に早産や常位胎盤早期剥離なども引き起こしやすくなります。

④巨大児

胎盤を通して血糖値の高い血液がお腹の中の赤ちゃんに送られ続け、赤ちゃんも高血糖の状態となることで正常よりも大きく成長してしまう状態を「巨大児」といいます。

巨大児になるとお産が難産になったり、生まれた後の赤ちゃんにも合併症が起きやすくなったりします

出産中

お腹の中の赤ちゃんが巨大児になると赤ちゃんが狭い産道を通ることができなくなり、帝王切開となるリスクが高まります

経膣分娩での出産の場合は、「肩甲難産(けんこうなんざん)」になるリスクが高まります

通常、赤ちゃんは頭が1番大きいので頭が出ればカラダはスムーズに出ます。しかし、巨大児の場合は、肩や胸・お腹に脂肪がついて大きくなってしまうことで、頭が出た後に肩がつっかえて出にくくなります。

巨大児になるとお母さんの膣や会陰(おすそ)を傷つけてしまい、傷が大きくなったり出血が多くなったりする可能性も高くなります。

出産後

通常、出産して妊娠が終われば糖の代謝機能が戻るので、血糖値は正常に戻ることが多いです。

しかし、中には産後も血糖値のコントロールが難しくなる方もいます。妊娠糖尿病になった人は、将来2型糖尿病を発症しやすい要因があるため、産後も食事や運動に気をつけていくことが必要です。

糖値が高い状態が続くとカラダが酸化しやすくなることで老化が進み、卵巣機能の低下や子宮環境の悪化を引き起こす可能性もあります。

また、血糖値が高い状態が続いている中で次の妊娠をすると、赤ちゃんに奇形を引き起こす可能性があります。

出生後の赤ちゃんへの影響

生まれた赤ちゃんは、自分で母乳やミルクを飲むことで血糖値を維持していく必要があります。

今まで胎盤を通してお母さんから高血糖の血液が送られ続け、高血糖状態が普通となっている赤ちゃんは、出生後に血糖値を維持していくことが難しくなり、低血糖状態を引き起こしやすくなります

低血糖となることで、呼吸障害や低体温などを引き起こす可能性もあります。

妊娠糖尿病ってどんな病気?

ここまで紹介してきた妊娠中に血糖値が高くなる病気を「妊娠糖尿病」といいます。

出産する年齢が高齢化している影響を受けて、最近では妊娠糖尿病を合併する割合は増加傾向にあります。妊娠前から糖尿病の診断を受けている方と妊娠糖尿病の方を合わせると、妊婦さん全体に占める割合は約15%にもなります。

参考:日本内分泌学会

こでは妊娠糖尿病とはどのような病気か、検査と診断方法、治療方法について解説していきます。

妊娠糖尿病とは

今まで糖尿病と診断されたことがなく、妊娠してから初めて血糖値が高いことを指摘された方で、糖尿病の診断基準をみたさない方を「妊娠糖尿病」といいます。

まで血糖値が高いことを指摘されたことがなくても、糖尿病の診断基準をクリアしている場合には「妊娠中の明らかな糖尿病」となり、妊娠糖尿病とはいいません。

また、妊娠前から糖尿病が持病にある方は糖尿病合併妊娠と呼び、これも妊娠糖尿病とはいいません。

あくまでも「妊娠中に初めて血糖値が高くなった」場合に、妊娠糖尿病と診断されます。

検査と診断方法

妊娠初期には全ての妊婦さんに採血を行い、血糖値も測定します。

そこで随時血糖値が高かった場合に「75gブドウ糖負荷試験(OGTT)」を行う病院やクリニックが多いです。

随時血糖値がどれくらいの場合に75gブドウ糖負荷試験を行うかの基準は、病院やクリニックによって異なります。

75gブドウ糖負荷試験(OGTT)とは

75gブドウ糖負荷試験は、だいたい妊娠中期である25週前後に行います。

糖分を含んだ炭酸水を飲んで血糖値の推移をみる採血検査です。

検査方法

  1. 空腹時に採血をして空腹時血糖を測定する
  2. 糖分を含んだ炭酸水を飲む
  3. 炭酸水を飲み終わった1時間後に採血して1時間後血糖を測定する
  4. 炭酸水を飲み終わった2時間後に採血して2時間後血糖を測定する

以下のどれか1つ以上が当てはまった場合、「妊娠糖尿病」と診断を受けます。

  • 空腹時血糖が92mg/dL以上
  • 1時間値が180mg/dL以上
  • 2時間値が153mg/dL以上

考:日本産婦人科医会

治療方法

妊娠糖尿病と診断された場合には、以下のような治療を行います。

食事療法

血糖値は食事を摂ることによって変動します。そのためカロリーや食事内容を意識することで、高血糖になることを抑える方法を「食事療法」といいます。

主食を減らして血糖値の上昇を抑えたり、1回の食事量を減らして分割して食事を摂ることで血糖値の変動を抑えたり、食事を工夫する方法があります。

自己血糖測定

妊娠中は血糖値を正常な値に保つことが大切であるため、血糖値の変動を把握するために自宅で特定のタイミングで血糖値を測定することがあります。

インスリン療法

食事療法で血糖値のコントロールができない場合には「インスリン」の自己注射を行うことで、血糖値のコントロールを目指します。

血糖値が高めと言われたときに気をつけたい4つのポイント

血糖値が高めと言われたときにはどんなことに気をつけるといいのでしょうか。

生活の中で心がけたいポイントについて4つ紹介していきます。

規則正しく食事をする

食事の時間が空き過ぎてしまうと低血糖になったり、食後は血糖値が高くなりやすくなったりします。血糖値をコントロールするためには決まった時間に食事をすることが大切です。

また、1回の食事量を減らして食事の回数を増やすことで血糖値の急上昇と急降下を抑えることができます。それぞれの血糖値の変動に合った食事方法を選択していくこともポイントです。

カロリーを摂りすぎない

血糖値を正常に保つためには適切なカロリーを摂取することが大切です。

カロリーを摂りすぎると血糖値も高くなりやすく、体重も増えやすくなってしまいます。体重が過剰に増えることで、さらにお腹の中の赤ちゃんが巨大児になりやすくなったり、妊娠高血圧腎症にかかりやすくなったりします。

娠中の適正エネルギー量は次の計算式で求められます。

適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×30+付加量

※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

加量は妊娠時期によって異なります。

付加量(肥満なし)付加量(肥満あり)
妊娠初期(〜16週)50kcal0kcal
妊娠中期(16〜27週)250kcal0kcal
妊娠後期(28週〜)450kcal0kcal

考:日本産婦人科医会 妊娠中の糖代謝異常の治療

妊娠中の過剰な体重増加は合併症にかかりやすくなるほか、いろいろなリスクがあります。

こちらの記事では妊娠中の太り過ぎによるリスクについて解説していますので、ぜひご覧ください。

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バランスよく栄養を摂る

忙しい生活の中では主食だけの食事など、炭水化物のみに偏った栄養になってしまいがちです。しかし妊娠中は元気な赤ちゃんをお腹の中で育むためにも、いつも以上に栄養バランスを考えて食事を摂ることが必要です。

特にミネラルはインスリンの糖代謝を助けてくれるため、血糖値を下げるサポートをしてくれます。血糖値が高めだと指摘された方は、ミネラルもしっかりと摂取していきたいですね。

ランスよく栄養を摂るためには、和食を中心とした野菜を豊富に使った食事がおすすめです。

しかし毎日の食事で栄養を考えてつくるのはとっても大変ですよね。不足しがちな栄養素を手軽に補うには、サプリメントを活用するのもおすすめです。

娠中のお母さんにぴったりのサプリメントが「mamaru(ママル)」です。

mamaruは、血糖値が高めの方がしっかりとりたいミネラルをたっぷり配合

さらに、妊娠中に積極的に摂りたい葉酸と鉄分を配合し、その他にも葉酸の吸収を助けてくれるビタミンB6、ビタミンB12葉酸と鉄分の吸収を助けてくれるビタミンCも同時に摂ることができます。

mamaru一つで、妊娠中に不足しがちな栄養素をしっかりと補うことができますよ。

また、乳酸菌やラクトフェリン、食物繊維を配合しているので、妊娠中に起こりやすい便秘へのアプローチにも◎

妊娠中はぜひmamaruを活用して、手軽に栄養バランスを整えましょう。

適度な運動を心がける

血糖値を正常範囲に保つためには食事を気にかけるだけでなく、適度な運動をすることも大切です。運動することでカロリーを消費することができ、血糖値が高い状態になるのを防ぐことができます。

ただし、妊娠中の運動は無理は禁物です。ストレッチやウォーキング、ヨガなど、ゆったりとした呼吸で楽しめる運動をしましょう。妊娠時期によってとってはいけない体勢などもあるので、注意しながら行なってくださいね。

まとめ

今回の記事では妊婦の正常な血糖値について、妊娠糖尿病とはどんな病気なのか、どのようなリスクがあるのか、血糖値が高めだと言われたときに気をつけたいポイントについて解説してきました。

娠中はカラダの中でさまざまな変化が起こるため、カラダがいつもと違う状態となってしまうこともあります。血糖値が高くなるのもその一つです。

妊娠糖尿病はお母さんの自己管理が問題というわけではなく、妊娠中に誰しもが起こり得るものなのです。血糖値が高めだと指摘された場合には、お母さんと赤ちゃんの健康のために、主治医の指示のもと食事や運動に気を配るようにしましょう

事を制限していく中で、バランスよく栄養を摂るためのサポートとして、mamaruはとってもおすすめです。

不足しがちな栄養素がたっぷりと含まれていて、mamaru一つで妊娠中に摂りたい栄養を補給することができます。

食事を考えるのに息がつまらないようにするためにも、サプリメントをうまく活用して残りのマタニティライフを一緒に楽しみましょう。

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